「野鳥美を求めて」熊谷勝著

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 北海道室蘭市に暮らす著者による野鳥の写真集。

 5月の早朝、朝露で輝く淡い緑の草原の中でようやく訪れた春の到来をうれしそうに告げるヒバリに始まり、それまで夢中になって松ぼっくりの種を食べていたと思ったら、ふと冬晴れの空をじっと眺めるイスカまで。四季折々の野鳥たちの姿を彼らが生きる表情豊かな自然と共に撮影する。

 胸が鮮やかな黄色い羽毛に覆われたアオジやコバルトブルーと白のコントラストが美しいオオルリなど、野に生きる鳥たちは実に豊かな色彩を身にまとう。それぞれの鳥が生来備えたその美しさだけでなく、彼らが生きる自然の中にはその「生息環境も含めた様々な美が存在する」と著者は言う。自宅近くの身近な場所で撮影するのは、その美を引き出すために、日々の自然環境の変化にすぐに対応するためだそうだ。

 つまり野鳥美とは、野鳥が持つ美しさと彼らが存在する自然の美しさの融合から生まれた美のようだ。

 毎年4月下旬、渡りの途中で室蘭絵鞆半島のササやぶに1週間ほど立ち寄るコマドリの尾羽の透き通ったオレンジ色を引き立てる逆光、虫を探して木々を飛び回るコサメビタキの背景に配したレンギョウの黄色と山桜のピンク、にわか雨にオオハンゴンソウの黄色い花びらを雨傘代わりにして雨宿りをするノビタキ、そして水の輝きを表現するために冬の渓谷に1カ月ほど通って撮影したカワガラスなど。自然の中で生きる野鳥たちを計算し尽くした構図に収める。だが、その作品は決して作為を感じさせない。

 雪に埋もれた公園のイチイの木のまるでカマクラのような「ねぐら」から顔を出したスズメや、雪面で餌を求めて動き回るシジュウカラと、その背中の配色と似ているササの葉の色合いなど、身近で見慣れた野鳥もこのような背景を得ると特別な存在に見えてくる。

 秋、海霧に覆われた岬から南に渡るノスリをとらえた一枚などは水墨画の世界だ。

 近づくことができない野鳥の撮影には必然、望遠レンズが用いられる。野鳥と背景の間に距離があると、望遠レンズの効果によって背景はボケ、複雑な色面で表現される。著者は「このレンズが作り出す虚像こそが実像である鳥を浮き上がらせ、輝かせる」という。

 雨や雪、光などの自然現象から草木の枝葉、ときに人工物の色合いを加え、鳥とのバランスを考えながら構図を決めシャッターが切られる。

 港の埋め立て地にいたオオジシギには、工事現場の虎ロープや注意喚起のビニールひものピンクをそれと分からないように添える。またクロツグミがいる林の向こうの民家の青いトタン屋根に芽吹いた木々の葉を配した一枚などは、まるで印象派の絵画の中に野鳥が紛れ込んだかのようだ。

「野鳥美」の世界が、しばしコロナ禍の鬱屈を忘れさせてくれる。

(青菁社 1600円+税)

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