「AI監獄ウイグル」ジェフリー・ケイン著 濱野大道訳/新潮社

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 新疆ウイグル自治区で、人権侵害が行われていること自体は知っていたが、ここまでひどいとは思わなかった。少数民族に対する抑圧は、専制国家ではよくある事態だが、ウイグル人に対する弾圧は、北朝鮮の人権侵害を超えている。最先端技術を活用したAIによる監視が加わっているからだ。

 主人公は、新疆ウイグル自治区の裕福な家庭で育ったメイセムという聡明な女性だ。北京の大学に進学し、その後トルコの大学院に留学した。そこから一時帰国した際に彼女は大きな不幸に巻き込まれる。

 AIの判定で不審者となった彼女の家の居間に監視カメラが設置される。加えて市民教室で愛国教育を受けさせられることになった。さらに外国に行ったことがある人は全員再教育センターに送られることになった。そこで命じられた窓ふきの仕事を拒否したメイセムは、収容所に送られることになってしまったのだ。

 収容所のなかでの暮らしは、想像を絶するものだった。洗脳に近い愛国教育と徹底的な監視だ。床にはセンサーが埋め込まれ、部屋には死角がないように監視カメラが設置される。さらにトイレのなかにも監視カメラがあり、職員がそれをモニターで凝視している。自分の意見を言うことは許されず、命令に少しでも逆らえば、厳しい懲罰が待っている。

 本書は、メイセムの証言だけでなく、彼女の周囲の人物の証言や中国政府の基本政策まで含めてストーリーを構成している。内容があまりに衝撃的だったため、私は最初これが本当のことなのか信じられなかった。ニュースソースが限られていて、メイセムや周囲の人物がウソをついていたり、大げさに言っている可能性があるかもしれないと思ったのだ。

 ただ、真実の可能性が高いと思ったのは、中国がAI監視システムを作り上げることができたのは、米国企業が供給したDNA採取装置やソフトウエアがあったからだと指摘していたからだ。つまり、本書はアメリカ側に立つ本でもないのだ。

 現代社会でまったく人権が守られていない人々がいる。しかし、どうしたら彼らを救えるのか、有効な手だてが思い浮かばないのがくやしい。

 ★★半(選者・森永卓郎)

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