「サバカン SABAKAN」金沢知樹著

公開日: 更新日:

 小学校時代の友達、タケちゃんは家が貧乏で、一年中ランニングシャツで通学していた。家は廃虚のように傾いて菱形をしており、屋根はブルーシートだった。

 夏休みのある日、タケちゃんは、ブーメラン島にイルカが来たらしいから見に行こうと僕を誘った。朝、4時起きして、自転車の2人乗りで大津町のタンタン岩まで行ったが、イルカはいなかった。

 タケちゃんは石でイルカの絵を描いて言った、「これで誰か来ても大丈夫やろ?」。

 別の日、「食べさせたいもののあるとよ」と言われてタケちゃんの家に行った。出されたのは握った酢飯に缶詰の「サバの味噌煮」をのせたもの。今まで食べたどの寿司よりおいしかった。

 表題作ほか3編の物語。

(文藝春秋 1320円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態