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「アジアの経済安全保障」伊集院敦、日本経済研究センター編著

 対中警戒の強化にともなって、一国の経済システムの安定維持を図る経済安全保障の重要性が増大している。

  ◇  ◇  ◇

「アジアの経済安全保障」伊集院敦、日本経済研究センター編著

 冷戦が終わって以来、グローバル化の夢が一気に拡大した。その恩恵をこうむったのが中国。ところが近年、米中が政治的に対立、経済さえ安泰なら和平もという発想が危うくなってきた。

 とはいえ、グローバルな関係を断ち切ることはもはや不可能。本書は台湾やASEAN、インド・パキスタンなどまで視野を広げた状況の報告と分析だが、主軸はやはり中国。特に西側が模索する対中デカップリング(分断)に対して習近平政権がどう対応するのか、また軍事技術開発と経済発展を合体させて経・軍の同時強化を図る「軍民融合発展戦略」についての分析は興味深い。米軍の現役兵士の中から中国に機密を漏らしたという理由で逮捕者が続出しているのもうなずける。

 中国はハイテク製品とエネルギーの輸入依存度が高く、デカップリングは大きな痛手。半導体国産化を推進し、米国の規制強化をくぐりぬけて具体的にどんな戦術をとれるか。

 中国は過去20年間、戦略目的で経済を駆使する「エコノミックステートクラフト」を推進してきた。その具体像を明らかにする本書は日経新聞系列のシンクタンクによる論集だ。 (日本経済新聞出版 3080円)

「2030年中国ビジネスの未来地図」趙瑋琳著

「2030年中国ビジネスの未来地図」趙瑋琳著

 中国は広大で地域格差や経済格差も大きい。グローバル化経済で恩恵を受けたのは沿海部の地域住民だが、デジタルインフラの整備のおかげで3級都市以下の地方都市や農村部などの「下沈市場」の持つ潜在力が注目されてきた。

 中国の伸びしろはまだ大きいのだ。

 本書の著者は中国出身で伊藤忠総研に勤務するアナリスト。予測不可能な時代でも確実性を見いだし、「一歩先の中国ビジネス」を指南すると宣言する。中国では各地域を「雁行型」で発展させる政策をとっている。このため著者は「2030年代の中国ビジネスの中心」は内陸部にあると見る。

 たとえば、西部の成都や重慶、中部の武漢や長沙などが代表例という。また、これまで西洋風の社名をつけていた中国企業が家電メーカーの「海信」(ハイセンス)、アパレルの「希音」(シェイン)など中国名を名乗るという変化も見られる。

 単なる嫌中意識ではわからない貴重な情報が多い。

(東洋経済新報社 2200円)

「チャイナ・エコノミー第2版」アーサー・R・クローバー著 東方雅美訳

「チャイナ・エコノミー第2版」アーサー・R・クローバー著 東方雅美訳

 1980年代から2002年までジャーナリスト、民間エコノミストとして香港や中国の情勢を詳細に把握し、02年に北京で「ドラゴノミクス」というコンサルティングと調査の会社を立ち上げたのが著者。本書は彼が長年かけて蓄積した知見の豊富さで好評を得た本の改訂版。これが邦訳されたことで日本のエコノミストにも一躍知られた。

「異形の超大国」中国のありさまを、国家制度や政治と経済の関係、農業と農村部の実態、都市部の状況、産業とその構造、企業システム、金融システム、労働市場などさまざまな側面からくわしく説明する。

 初歩的な知識と専門的な情報がうまくミックスされ、中国経済のファクト(実態)とロジック(思想や戦略)が見えてくる。世界水準の入門書だ。 

(白桃書房 3000円)

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