再生エネルギーという美名の陰で

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「メガソーラーが日本を救うの大嘘」杉山大志編著

 次世代エネルギーとして大いに期待された太陽光発電などの再エネ事業。東京都も前のめり姿勢だが、実はとんでもない間違いと批判する声が高い。



「メガソーラーが日本を救うの大嘘」杉山大志編著

 再エネ事業は喫緊の課題といわれるが、実は精査すべき課題は山積み。それどころかむしろ環境破壊を推し進めるとして批判する声もある。

 本書の編著者は批判派の先端に立つキヤノングローバル戦略研究所のトップアナリスト。

 国連の気候変動問題に関する政府間パネルのメンバーを務めた専門家。ジャーナリストや研究者らを擁した本書の冒頭に主要な論点を列記している。

 いわく、既存の田畑をつぶして太陽光パネルを設けるのは「環境に優しい」か。パネルを製造する中国ではウイグル人の強制労働が行われているといわれるが、それは人権侵害への加担ではないのか。いまも太陽光発電パネルは増えたはずなのに電力料金が高くなるばかりなのはおかしくないか。そもそも太陽光発電が本当に「一番安い」のなら義務化する必要などなく、市場が自主的に選ぶのではないか?

 全体に技術面よりも政治状況などを背景とした批判なのが特徴。本論でも東京都の「パネル設置義務付け」政策を「巨額の国民負担で“ジェノサイド支援”」とバッサリ。ドイツ在住の日本人ジャーナリストも、現地の緑の党の脱原発政策へのこだわりを「実現不能」「左傾化したメルケル前政権の置き土産」と両断している。

(宝島社 1540円)

「世界資源エネルギー入門」平田竹男著

「世界資源エネルギー入門」平田竹男著

 なにかと批判の多い再生エネルギー問題だが、世界的な視野で資源のことを考えるとどうなのか。これをわかりやすく総覧できるのが本書。露、独、米、中、EU、インド、東南アジア、豪、ブラジル、中東とまさに世界中の国々に各章を割り振って説明する。

 ウクライナ侵攻後、EUの中で目立ってロシア依存度の高かったドイツの状況にも目配りされている。日本では洋上風力発電のポテンシャルが高いというのは大方には初耳だろう。

 著者は元通産官僚で資源エネルギー庁にも出向した専門家。安倍政権では資源戦略担当の内閣官房参与を8年も務めたが、いまは早稲田大大学院のスポーツ科学研究科教授。

 エネルギーの専門家がスポーツ? と思うが、通産省時代にボランティアとしてJリーグの誕生やW杯招致に尽力したらしい。

(東洋経済新報社 3740円)

「エネルギー危機と原発回帰」水野倫之、山崎淑行著

「エネルギー危機と原発回帰」水野倫之、山崎淑行著

 ウクライナ危機で電力の安定供給と脱炭素の両立が課題となる中、2023年、国内初となる大規模な洋上風力発電所が秋田県沖で商業運転を始めた。能代港と秋田港沖に高さ150メートルの大型風車33基を設置。一般家庭13万世帯の電力供給を担っているという。

 海外ではヨーロッパを中心に30年前から導入され、イギリスでは40の海域で2300基が稼働中だが、日本ではなかなか進まない。

 こうした洋上のみならず再生エネルギーの普及が遅れる理由を、本書では2点指摘する。1つは注目はするが資金を出す企業や金融機関がないこと。2つ目は、余った電力を首都圏で使おうにも、電気を送る送電網が弱いという問題だ。再エネと送電網はセットで考えるべき、という指摘はごもっとも。

 巻末には池上彰氏との特別鼎談を収録。

(NHK出版 1023円)

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