著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

パン屋の本屋(日暮里) 中庭でパン屋とつながった“とんがらない”選書の本屋

公開日: 更新日:

 変わった名前だ。でも、日暮里駅から住宅街を歩いた先に忽然と現れたウッディーな建物2つが連なる光景に納得する。「ひぐらしガーデン」という商業施設の中に、カフェ併設の「ひぐらしベーカリー」と中庭でつながって本屋がある。  

 午前中に訪問したが、カフェに外国人が多いなーと思いきや、「日暮里は、成田から京成線で一直線。近くにゲストハウスがあり、ご滞在の方々が朝食に来られるんです。続きで本屋にお立ち寄りも多いです」と店長の近藤裕子さん。元は1917年創業のフェルト工場だった場所。閉鎖する際に、オーナーが「長くやってきたこの地域に密着することをやりたい。パン屋と本屋だ」と思いつき、2016年にオープンしたそうだ。

 12坪に約4500冊。向かって右が絵本で、左が書籍と雑誌。目下、「クリスマスフェアー」開催中で、店内全域が華やいでいる。どれどれ、どんなクリスマス本が?

「飛び出したり、音が出たりする“しかけ絵本”が人気ですね」(近藤さん)

まどから おくりもの」(五味太郎著)のページをめくると、サンタを待つ子どもたちの家の窓部分が、穴あきの仕掛けになっている。

いっぱい クリスマス」(かしわらあきお著)は、ボタンを押すとクリスマスのメロディーが流れ、トナカイの鼻が光るじゃない。すごいすごい。

 さらに、「近年、このシーズンにブームなのがアドベントカレンダーです」って。「メリークリスマス! せかいのめいさくえほん」は、ピノキオ、アラジンなど小さな絵本がカレンダーの窓の中に1冊ずつ入っている。これをプレゼントしたい子たちの顔が浮かんだが、同行のNカメラマンも同様のようで、「おばけのパンやさん」(いちよんご著)を手に取り、にこにこ。「3歳と0歳のうちの子が大好きなシリーズなんですよ」と、いそいそレジへ。あ、買っちゃった。

「“とんがらない”をコンセプトに、お客さんの好みを推し量って選書しています」とのことで、「好奇心」「よのなか」などと仕切られた本の棚も、なかなか個性的。「僕1人で子どもたちの面倒を見なくちゃならない休日、これからここへ来よう」と、Nカメラマンがつぶやいた。

◆荒川区西日暮里2-6-7/JR山手線・京成本線日暮里駅北改札から徒歩7分/℡03・6806・6444/10~17時、月曜休み(月曜が祝日なら翌火曜休み)

ウチらしい本

こんがり、パンおいしい文藝」津村記久子、穂村弘ほか著(河出書房新社 880円)

「帯に『パン好きによるパン好きのための芳香ただようエッセイ40篇』とあり、まさに。収録されているのは、角田光代、池澤夏樹、林望ら第一線の作家と、草野心平、山口瞳、開高健らすでに亡くなっている作家の作品がほぼ半々のアンソロジーです。クロワッサン、フレンチトースト、サンドイッチ……。いろいろなパンが出てきて、どこから読んでもおいしく(笑)、人との会話の糸口に応用できる話もいっぱいです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?