著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

フォルモサ書院(大阪・南森町)台湾を中心に国内外の「旅」が詰まった古書店

公開日: 更新日:

“日本一長いアーケード商店街”で知られる全長2.6キロの大阪・天神橋筋商店街の中ほど。昭和40年代築のビルの2階に店がある。

 入り口前の壁を台湾の古地図が占領。色調が渋い。1660年のもの(複製)と説明書きが見える。つまり大航海時代だ。

「ポルトガル人が台湾島を発見し、『フォルモサ』と言ったんです。ポルトガル語で“美しい”の意味。台湾がそう呼ばれるようになって」と店主の永井一広さんが指さす、その地図の上部に「FORMOSA」の文字。

 ここ約7坪の「フォルモサ書院」は、台湾を圧倒的に中心に、アジア各地、欧米、沖縄・琉球、北海道、関西など国内各地の地誌、紀行、写真集、食、歴史、文学等の本が詰まった「旅」の古書店だ。永井さんはなぜ台湾好きに?

「若い頃、大陸の中国語を勉強したんですが、勤務先の郵便局に台湾人留学生がバイトに来て。ええっと、それが妻で……」

郵便局退職後、「今しかない」と台北で1人暮らし

 2017年に郵便局を退職し、「今しかない」と3カ月間、台北で1人暮らしをし、その翌年にこの店を立ち上げたそう。さてさて、店内を拝見。というか、台湾本の棚に直行──。

 あるわあるわ、白い本(新しい本)も茶色い本(昔々の本)も。独特の民族衣装を着た女性や満員乗車の列車の写真が表紙の「台湾(日本統治時代)の都市と原住民の絵葉書集」に引きつけられ、「台湾 ミニ日本の奇跡」にも手が出る。邱永漢の著作も、台湾の版元の新刊「台灣的鉄道」「台湾老街」などのシリーズとも目が合ったぞー。

 永井さんが「台湾書店 百年の物語」(H.A.B)を手に、「妻と2人で翻訳したんです」とおっしゃる。台灣獨立書店文化協會の編著。日本の統治時代から現代まで、台湾の書店を軸に台湾文化の歴史が描かれているそうで、すごっ。ましてや同著が縁で、今年は「台北国際ブックフェア」に招かれて、日本の古書業界について講じてきたとは。大したもんだ。

 にわかに台湾に行きたくなってきた。永井さん作の「台湾書店さんぽ」も買い、あと「地図に秘められた『東京』歴史の謎」など4冊を大人買いした。

◆大阪市北区天神橋3-2-31小西ビル2階/地下鉄谷町線・堺筋線南森町駅、JR東西線大阪天満宮駅から徒歩2分/11時半~18時ごろ(入店17時40分ごろまで、日曜17時半ごろまで)/月・火曜休+臨時休あり

ウチらしい本

「重返花磚時光」徐嘉彬著

「2021年に出た新刊本。日本統治時代の築造など台湾のレトロ建築にはすごくきれいなマジョリカタイルが多用されているんです。この本には、マジョリカタイルが現存していて、訪れることのできる建築物が多数紹介されています。写真だけ見ても楽しめますよ」

(台湾・境好出版 3300円)

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