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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

本屋BREAD&ROSES(松戸・常盤平)目指しているのは「生きづらさを感じている人に寄り添える本屋」

公開日: 更新日:

 緑深い団地やマンションが軒を連ね、ヤマモモ、ハナミズキなどの並木道がそれらをつないでいる。いいなー、松戸の町って。と思っているうちに「本屋BREAD&ROSES」に着いた。

 面しているのは、「常盤平さくら通り」。迎えてくれた店主、鈴木祥司さん(61)が「このロケーション、春はすごいんですよ」とおっしゃる。桜の古木の真ん前に、原則セルフでコーヒーを入れ、買ったばかりの本を開けるカフェスペースが。

 2023年10月にオープン。約10坪の店内に2500冊。広々としているのは、「車椅子の方、ベビーカーを押した方に遠慮なくお入りいただけるように」との配慮からだそう。

 鈴木さん、「定年まで、労働組合の専従でした」とは異色の経歴だが、本棚を拝見するうち、しっくりきた。そもそもパン(BREAD)は最低限の生活、バラ(ROSES)は豊かに生きるための尊厳を表し、1912年に米国で起きた移民たちのストライキの名をもとに付けられた店名だ。「生きづらさを感じている人に、寄り添える本屋」を目指しているという。

店内2500冊の本に通底するのは労働や自治

 中高生向きのような棚に「いじめを生む教室」「学校に行きたくない君へ」が目に留まり、絵本「世界で最後の花」「戦争は、」が面陳列されている。う~結構、重たいですね、と心で呟き進むと、オリジナルのカテゴリー分けが。「それでも私たちは、生きていく」「ジェンダー平等を当たり前の社会に」「歴史から学ぶ-日本」「先人たちの思索/考えるということ」など。いろいろなアプローチに通底するのは労働であったり、自治であったりする。

「これなんか、とても面白い」と鈴木さんが「言いなりにならない江戸の百姓たち」を手にした。

「江戸時代の農民って、身分制度の中で意見を持たなかった? いいえ武士に『物言う』姿がありました」と。地元・松戸市立博物館館長の歴史学者、渡辺尚志さんの著書だ。

 あと、面陳列の中から私が手に取ったのは、「人間関係を半分降りる」「あいまいさに耐える」「武器としての土着思考」。あ、ジェンダー本のコーナーに「追悼 田中美津さん」として「いのちの女たちへ とり乱しウーマン・リブ論」「かけがえのない、大したことのない私」の2冊が並んでもいた。

◆松戸市常盤平4-8-15 ウエキビル1階/新京成線常盤平駅または五香駅から徒歩約10分/12~20時(日曜は18時まで)、月曜休み

ウチの推し本

「くらしのアナキズム」松村圭一郎著 ミシマ社 1980円

「アナキズム=無政府主義者と捉え、過激な思想と思われがちですが、違う。アナキズムとは、国家に頼らずに自治をすることと捉え直ししたい。『国って何のためにあるのか? ほんとうに必要なのか?』との呼びかけから始まるこの本の著者は、文化人類学者。国や政府は昔からあるようでも、人類の長い歴史から見ると、今のような国が誕生したのは最近のこと。立ち止まって考えたい内容が詰まっています」

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