「獄に暮らせば」重信房子著/作品社(選者:佐高信)
獄中生活にもワクワクした人一倍強い好奇心
「獄に暮らせば」重信房子著
西郷隆盛を革命家と呼ぶ人はいてもテロリストと言う人はいないだろう。西郷は時の政府に敵対した反乱軍の大将だったので靖国神社には祀られていない。しかし、西郷を愛国者でないと言う人もいないと思われる。いわば愛国者の代表である西郷にとっては反乱こそが愛国だった。愛国とは「愛政府」ではなく「愛首相」でもない。
ところが、国家に反逆した者をテロリストと犯罪者的に呼ぶ傾向が強まった。重信によれば、それはアメリカやイスラエルが意図的に進めてきた結果だという。
元日本赤軍リーダーの重信をテロリスト呼ばわりする者もいるが、その呼称は圧倒的にトランプやネタニヤフにこそ当てはまる。
重信はまったく関係していない「ハーグ事件」によって20年の刑を下された。本書はその「21年7カ月の獄中日記から」である。
驚くのは「獄は正直言って、私にとっては、毎日好奇心をワクワクさせてくれる場所でもありましたし、嬉しいこともありました」と振り返っていることだ。
「フランスの刑務所は喫煙も夫婦の愛の時間もOK」とのことだが、がんじがらめの日本の刑務所に暮らして「ワクワクさせてくれる場所」と回顧する人もいないだろう。そんな人一倍強い好奇心が「判決は終わりにあらず始まりとまつろわぬ意志ふつふつと湧く」といった短歌をつくらせた。「桜の下しばし忘れる癌治療」という句は特選になっている。
なるほどと思ったのは次の指摘である。
「夜のニュースで日産のカルロス・ゴーン会長逮捕。特捜部は国民的関心事の財務省改ざん問題に動かなかった割に、一民間人に周到に手ぐすね引いて、羽田で逮捕には大きな違和感です」
ゴーンの強欲さを擁護するつもりはないが、日本の「警察国家化・検察の『正義』の独占」が確立したことを示していると、重信は批判している。
私は、あるヤクザの声が忘れられない。自分たちもそれぞれ組の代紋を背負って悪いことをやるが、国家という菊の代紋を背負っている奴らが一番アコギなことをする、と彼はつぶやいたのである。
重信と私は同じ1945年生まれ。共に傘寿を越えたが、重信の娘のメイは「母親を誇りと思う」と言っている。娘にストレートにそう言わせる母親がどのくらいいるだろうか。 ★★★



















