著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

Main Tent(吉祥寺)海外の絵本から学習漫画まで古本絵本が7000冊

公開日: 更新日:

 店頭が、キーホルダー、マッチラベル、レトロ絵ハガキなどでわちゃわちゃしていて、「ん? 何屋さん?」な雰囲気。でも、大丈夫。窓ガラス越しに「ひまわり」「あかいぼうし」などの絵本が、手招きしているから。

 22平方メートルの店内に入ると、英語、フランス語、ハングルのもの、「旅の絵本」「もりのなか」など名作、あらら? 「三びきのやぎのがらがらどん」「かいじゅうたちのいるところ」といった定番、キャラクター絵本、学習漫画まで、盛りだくさんの古本絵本が、やっぱりわちゃわちゃと約7000冊。まさにワンダーランドだ。

「滞在時間が一番長かったのは、地方から来られた年配の男性。近くのビジネスホテルに泊まって、2日間、開店から閉店までおられましたね~」と、店主の冨樫チトさん。それはすごい!

「買い取りや図書館整理で入手したものをあえて選書せずに並べています」

 話していたら、宅配便屋さんが荷物を届けにきた。「次の読み手につないでほしいと全国から送られてくる」とのこと。それらをすべて買い取るほか、海外買い付け、図書館丸ごと整理などで入手したものを「あえて選書をまったくせずに並べてます」ってのにも、びっくりだ。

「オープンは2015年。元はストリートダンサーでした」

 と、冨樫さんがカウンターに目をやる。積まれていた「踊る絵本屋」が自著。

「タイトル、比喩じゃないんです(笑)」

 チトさんの名は、ご両親が、フランスの児童文学「みどりのゆび」の主人公の名前から付けた。「踊る絵本屋」の版元は「緑のゆび」と聞き、「絵本の古本屋さんになったのも必然なんだろうな」と思っちゃう。

「絵本を読む瞬間、人は誰でも子供になる。子供という定義は100歳くらいまで」

「すぐに枯れる“切り花”のような絵本と、時間をかけて子供の心に根付く“種まき”の絵本。どっちも必要ですよね」

「絵本に興味ないという人でも、懐かしい1冊から絵本へドアが開くと、“風船”が1回膨らむ。1回膨らんだ風船は次からすぐに膨らむでしょう?」

 名言がざくざく。すべて同感。面陳列のコーナーにだけ、選び抜かれた新本が7冊。「せかいのひとびと」「あと2時間で新年です」「六にんの男たち」……。平和、反戦が密かなキーワードの絵本だ、と気づいた。

◆武蔵野市吉祥寺本町2-7-3フェリオ吉祥寺102/℡0422.27.6064/中央線・総武線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩7分/平日午前10時半~午後5時、土曜午前10時半~午後5時半、日曜・祝日午前10時半~午後6時。水曜休み。

ウチの推し本

「クリスマスまであと九日」エッツ&ラバスティダ作 たなべいすず訳、冨山房

「同じくエッツ作の『もりのなか』は白黒で描かれ、色彩を想像できる作品ですが、これは限られた色数で描かれた格別の作品。メキシコのクリスマスを舞台に、ピニャータを作る文化や独特の色彩感覚が伝わります。私は、娘の名前を、この物語の主人公名から名付けたんです。今、ウチに1冊ありますが、版元に注文しても入ってこない状態なので、売れません。図書館で借りてください」

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