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坂倉昇平

1983年、静岡県生まれ。東京都立大学人文学部卒、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。若者の労働問題・貧困問題に取り組むNPO法人「POSSE」理事兼雑誌「POSSE」編集長。近著に「AKB48とブラック企業」(イースト新書)がある。

「総選挙」直前連載 AKB48はブラック企業なのか<3>

公開日: 更新日:

 AKBは夢のステップだったはずだ。俳優、声優、モデル……。だが、いくら総選挙という人気競争を頑張ったとしても、それのみでは夢を見ることができるだけで、夢をかなえることはできない。総選挙によってグループ内で活躍できても、セカンドキャリアが有利になるわけではないのだ。この現実は、ブラック企業の働かせ方を彷彿(ほうふつ)とさせる。若者に夢を語らせ、夢を見させながら、過酷な仕事を受け入れさせてしまう。それでも次のキャリアにつながる経験になればいいのかもしれないが、その仕事の内容は、夢をかなえるための実績にはほとんどならない。そして大勢の若者が、使い潰されて辞めていく。

 そもそもAKBでは、選抜総選挙という競争を駆け上がったとしても、その実力や評価は、48グループの内部の物差しによるものでしかない。選抜総選挙は、あくまでもメンバーの人格・キャラクターをかけた、曖昧で不透明な「人気競争」である。歌やダンスを上達させても、それだけでは順位は上がらない。だがその人気は、外部では通用しない。ある組織で評価される能力が、他の組織に移ると評価されないという意味で、この構造はブラック企業はもちろん、日本型雇用を堅持する会社の問題にも似ている。

 こうした現実で生まれるメンバーたちの不安を先回りするように、〈努力しろ〉と激励する歌詞を秋元康は量産し、彼女たちを奮い立たせている。やはり、AKBは「人材育成」をせずにメンバーを使い潰す、ブラック企業の縮図なのだろうか。

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