虚実入り混じる新感覚 ドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」

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 山田孝之はカメレオン俳優だ。ある時は脱力系ヒーロー・勇者ヨシヒコ、またある時はコワモテの闇金・ウシジマくんと化す。さらに缶コーヒーのCMでは、何十種類もの“働く男”を飄々と演じ分けてしまうのだ。

 そんな山田が主演映画の撮影中、演技ができなくなって製作中止。山田は現場を去る。そして、たどり着いたのが北区赤羽だ。1Kのアパートに住み、清野とおるの漫画「ウヒョッ!東京都北区赤羽」に登場する実在の赤羽人と交流していく。それが昨年夏のことだ。「山田孝之の東京都北区赤羽」は、山田が赤羽で過ごしたひと夏を追ったドキュメンタリードラマだ。あくまでもドラマであり、「向こう10年、役者を休業」といった発言もセリフである。ただ山田が言うと、“俳優としての悩み”にも不思議なリアリティーが生まれるから面白い。

 実在の場所と実在の人物たちでありながら、どこまでが「実」で、どこからが「虚」なのか。その境界部分を探りながら見る楽しさが、このドラマにはある。先週は「山田を心配する」大根仁監督が登場したが、これまた虚実皮膜の間の素顔と本音に拍手だった。

“連続ドキュメンタリードラマ”などというトリッキーな離れ業は、山田孝之と山下敦弘監督とテレビ東京でなければ成立しなかっただろう。見ておくなら今のうちだ。

(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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