虚実入り混じる新感覚 ドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」

公開日: 更新日:

 山田孝之はカメレオン俳優だ。ある時は脱力系ヒーロー・勇者ヨシヒコ、またある時はコワモテの闇金・ウシジマくんと化す。さらに缶コーヒーのCMでは、何十種類もの“働く男”を飄々と演じ分けてしまうのだ。

 そんな山田が主演映画の撮影中、演技ができなくなって製作中止。山田は現場を去る。そして、たどり着いたのが北区赤羽だ。1Kのアパートに住み、清野とおるの漫画「ウヒョッ!東京都北区赤羽」に登場する実在の赤羽人と交流していく。それが昨年夏のことだ。「山田孝之の東京都北区赤羽」は、山田が赤羽で過ごしたひと夏を追ったドキュメンタリードラマだ。あくまでもドラマであり、「向こう10年、役者を休業」といった発言もセリフである。ただ山田が言うと、“俳優としての悩み”にも不思議なリアリティーが生まれるから面白い。

 実在の場所と実在の人物たちでありながら、どこまでが「実」で、どこからが「虚」なのか。その境界部分を探りながら見る楽しさが、このドラマにはある。先週は「山田を心配する」大根仁監督が登場したが、これまた虚実皮膜の間の素顔と本音に拍手だった。

“連続ドキュメンタリードラマ”などというトリッキーな離れ業は、山田孝之と山下敦弘監督とテレビ東京でなければ成立しなかっただろう。見ておくなら今のうちだ。

(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  2. 2

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 3

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  4. 4

    国分太一の先行きはさらに険しくなった…「答え合わせ」連呼会見後、STARTO社がTOKIOとの年内契約終了発表

  5. 5

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  1. 6

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  2. 7

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  3. 8

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  4. 9

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  5. 10

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも