デビュー作は「SMAP」6人の幻の映画 漫画家・大島司の原点

公開日: 更新日:

「シュート!」はSMAPがそろって出演した唯一の作品に

 1990年からサッカー漫画「シュート!」を連載し累計5000万部の大ヒット。テレビアニメ化や映画化もされ、映画はSMAP主演で実写化された。そんな人気作を生んだ漫画家・大島司さんが「自身の原点」と語るのは、中学時代に黒板に描いた絵だ。

  ◇  ◇  ◇

 これは町立大須賀中学3年のとき、教室の後ろの黒板に水彩絵の具か何かで描いたものです。「全中大会」という中学対抗のスポーツ大会の地区予選のときに盛り上がり、クラスのみんなに「描いて」と言われて。クラスメートには“絵がうまい子”と思われていたので、毎年、大会の時期に描いていましたね。終わったら消してしまうし、写真なんてあんまり撮らないから、残っているのはこの一枚。ずっとスポーツ漫画を描いている私にとって原点のような一枚です。ひたすら楽しくて描いていたことを懐かしく思い出しますね。当時はバレー部に所属し、漫画ばかり描いてたわけじゃないですけど。

 ただ、小学生の頃には「漫画家になりたい」と思っていました。中学3年の部活動引退後には少女漫画誌「なかよし」の新人賞に投稿、入賞していましたね。でも、少女漫画にふさわしくないスポーツ漫画を投稿するもんだから、そのうち入賞しなくなって。それで、同じ講談社の少年漫画誌「週刊少年マガジン」新人賞にバレーボール漫画「チーム」を投稿したところ、一番下の選外佳作に入って編集者がついたんです。高校を卒業し、「東京デザイナー学院」のアニメーション科に進んだ頃ですね。

 ここを卒業してすぐ、「シュート!」でデビューしました。「マガジン」で13年連載し、単行本は全68巻、5000万部が出ました。ラッキーでしたね。目をかけてくれた編集者の力が大きかったと思います。読者から「『シュート!』を読んでサッカーを始めました」なんて手紙をもらうとうれしかったなぁ。

腰が低く気を使っていた中居クン

 SMAPで映画になったときも「ラッキー!」って。当時のSMAPは、キムタク木村拓哉)とゴローちゃん(稲垣吾郎)が人気があったように思います。でも、何といってもジャニーズ事務所ですからね。女子にも「シュート!」を知ってもらえました。

 打ち上げではメンバー全員とお会いしましたけど、中居クンなんて腰が低いし、周りに気を使うし、「一緒に写真撮ってもいいですか」とお願いしたら「いいですよ!」って、親指を立てながら笑顔で写真に納まってくれました。解散騒動には驚きましたが、脱退した森且行クンを含め、全員が揃って出演した映画は「シュート!」だけ。いい記念になりました。

 連載の後半はかなり疲れていましたね。朝起きて夜寝るまで、お風呂やトイレ以外は、ずーっと机に向かって描き続ける生活だったんです。長年の疲れがたまり、漫画を描くテンションが下がり、そのうえ編集者が代わって感覚が合わなくなるし……。

 2006年からは新潮社の「週刊コミックバンチ」でバレーボール漫画「アタック!!」の連載を始め、昨年2月から双葉社の「漫画アクション」で連載を再開。その間、5年ほどブランクがありました。「バンチ」が休刊したからですが、正直、いいきっかけでしたね。ときおり漫画のことを考えたり、読み切りを描いたりもしたけど続かず、ただボンヤリしていました。好きなことを職業にしたのにこんなにつらいなんて、と思ったり。

 そんなとき、アルバムをひっくり返していて見つけたのがこの写真。描けるだけで楽しかった、当時の思いがよみがえりましたね。

 相変わらず描くのは大変ですが、それは自分にできる最高の表現にチャレンジしているから。掛川の子たちがバレーを通してどう成長できるか、自分でも楽しみにしながら「アタック!!」を描いています。

▽おおしま・つかさ 1970年、静岡県生まれ。90年、サッカー漫画「シュート!」でデビュー。06年からバレーボール漫画「アタック!!」を連載。休載を経て15年2月、「アタック!!~約束のコート~」のタイトルで連載再開。単行本第2巻が発売中だ。2月14日まで「シュート!」「アタック!!」の舞台となった静岡・掛川で原画展開催。16年から掛川市のふるさと大使を務める。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  2. 2

    帝釈天から始まる「TOKYOタクシー」は「男はつらいよ」ファンが歩んだ歴史をかみしめる作品

  3. 3

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  4. 4

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  5. 5

    立川志らく、山里亮太、杉村太蔵が…テレビが高市首相をこぞってヨイショするイヤ~な時代

  1. 6

    (5)「名古屋-品川」開通は2040年代半ば…「大阪延伸」は今世紀絶望

  2. 7

    森七菜の出演作にハズレなし! 岡山天音「ひらやすみ」で《ダサめの美大生》好演&評価爆上がり

  3. 8

    小池都知事が定例会見で“都税収奪”にブチ切れた! 高市官邸とのバトル激化必至

  4. 9

    西武の生え抜き源田&外崎が崖っぷち…FA補強連発で「出番減少は避けられない」の見立て

  5. 10

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ