著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

「99.9」で緩急自在の芝居 香川照之の出演作にハズレなし

公開日: 更新日:

 香川照之(50)が出ている「日曜劇場」にはハズレがない。「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「流星ワゴン」、そして今回の「99.9―刑事専門弁護士―」だ。

 主役は嵐の松本潤(32)。飄々としていながら、「事実が知りたいんです」と言って、とことん事件を追及する弁護士、深山大翔を好演している。どんなに逆転するのが難しそうな案件であっても、同僚弁護士の榮倉奈々やパラリーガルのマギーや片桐仁(怪演に拍手!)の力を借りつつ、その真相に迫っていくのだ。

 香川が演じる佐田は、深山が所属する刑事専門ルームの室長だが、本来は企業弁護のエキスパートだ。元検事で野心家。超マイペースで暴走気味の深山にブレーキをかけたり、時には手柄を横取りしたりする。ハラに一物も二物もあるこの男を、香川は緩急自在の芝居で造形していく。

 しかもここ数週ほど、18年前の事件の再審請求にからんで、佐田の過去が浮かび上がってきた。宇田学のオリジナル脚本は、しっかりした伏線とその回収が毎回見事だが、ドラマの後半戦に入ってますます冴えている。松本潤と香川照之の本格勝負もこれからだ。

 そうそう、佐田が唯一言いなりになってしまう年下妻役の映美くらら(元・宝塚月組トップ娘役)がいい味を出している。“ポスト檀れい”の出現かもしれない。

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