小島慶子<下>「ホライズン」は40代半ばだからこそ書けた

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「オール読物」で連載していたときに、現地での取材はしていません。結末を決めていたわけでもなく、ストーリーは毎号、行き当たりばったり。毎月、物語の冒頭から読み返して続きを書いていました。小説の書き方としてはどうなのかしら(笑い)。ですが、生身の人間が生きていくのは、それこそ行き当たりばったり。日々の生活で交わる人々が、どんな生い立ちと経歴の持ち主かも、何を考えているのかも分からない。仲たがいするか、仲良くなるのかも知らないのに、とりあえず関係を続けているわけです。

 そんな関係をある時期に振り返ると、ひとつの物語になっている。人生は、小説を読むように過去を振り返ることはできるけれど、小説を書くように思い通りの筋書きを生きることはできない。そんな不確実な日々の中にあっても人間関係というのは成立している。だから、小説を書くときだって「この人、どうなるのかな」って思いながら、書くうちに物語ができていくのは自然なことだと思うのです。

 テレビやラジオに加え、文章を書く仕事もしていて思うのは、与えられるチャンスは素直に受け取ろうということ。今は人生の先輩方が通ってきたであろう中年の危機に差しかかり、身の丈で生きていくことを受け入れる修業の真っ最中です。

▽こじま・けいこ 1972年、豪州生まれ。学習院大学法学部卒業後、TBSアナウンサーに。2010年の退社以降、タレント、エッセイストなどとして活動。現在は家族の拠点を豪パースに移し、自身は日本と往復する生活を送っている。4月に最新刊の小説「ホライズン」(文藝春秋)を上梓したばかり。

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