役者の仕事はインナーボイスをどれだけさらけ出せるか

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〈倉本脚本は一言一句変えてはならない〉という業界伝説は今も根強く残っている。だが、正しくは「俺が書いたホン(脚本)以上にしてくれるなら変えてくれ」だと倉本氏。それは脚本家としての矜持であり、役者や演出家への熱い挑発でもある。

倉本 シナリオライターにも2つの仕事があると話しましたが、テレビの演出家の仕事にも2つある。ひとつは役者に演技をつけて動かす、〈演技演出〉と呼ばれるものです。もうひとつが〈中継演出〉という仕事。

碓井 演技演出は芝居に関することで、中継演出というのは役者が演じている「場」を映像化するということでしょうか。テレビ草創期はドラマも全部生放送でしたから、まさにスタジオからの中継だったわけです。

倉本 演劇の知識もあまりない助監督たちが監督のカット割りにならって、役者の演技を合わせちゃう。これは嘘ですよね。

碓井 どういうことですか。

倉本 たとえば、この打席でイチローがメジャー通算3000本安打を打つからアップを撮ったり、カット割りを多用したり、揚げ句の果てにヒットの飛んでくる箇所にカメラを構えていて、球が飛んできた途端に音楽をかぶせたとするでしょう。すると、その途端に野球中継ってのは面白くなくなってしまいます。何が起こるか予測不能だから面白いわけですから。芝居も同じで、あくまで演技演出が先にあって、その次に事態が起こって、それを中継演出するのが本来のあるべき演出の仕事だと思うんですね。

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