役者の仕事はインナーボイスをどれだけさらけ出せるか

公開日: 更新日:

〈倉本脚本は一言一句変えてはならない〉という業界伝説は今も根強く残っている。だが、正しくは「俺が書いたホン(脚本)以上にしてくれるなら変えてくれ」だと倉本氏。それは脚本家としての矜持であり、役者や演出家への熱い挑発でもある。

倉本 シナリオライターにも2つの仕事があると話しましたが、テレビの演出家の仕事にも2つある。ひとつは役者に演技をつけて動かす、〈演技演出〉と呼ばれるものです。もうひとつが〈中継演出〉という仕事。

碓井 演技演出は芝居に関することで、中継演出というのは役者が演じている「場」を映像化するということでしょうか。テレビ草創期はドラマも全部生放送でしたから、まさにスタジオからの中継だったわけです。

倉本 演劇の知識もあまりない助監督たちが監督のカット割りにならって、役者の演技を合わせちゃう。これは嘘ですよね。

碓井 どういうことですか。

倉本 たとえば、この打席でイチローがメジャー通算3000本安打を打つからアップを撮ったり、カット割りを多用したり、揚げ句の果てにヒットの飛んでくる箇所にカメラを構えていて、球が飛んできた途端に音楽をかぶせたとするでしょう。すると、その途端に野球中継ってのは面白くなくなってしまいます。何が起こるか予測不能だから面白いわけですから。芝居も同じで、あくまで演技演出が先にあって、その次に事態が起こって、それを中継演出するのが本来のあるべき演出の仕事だと思うんですね。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束