著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

松田龍平が淡々と 映画「泣き虫しょったんの奇跡」で妙味

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 松田龍平という俳優には注目してきた。松田優作の息子だからという面もあるが、演技者としての個性が絶えず揺れている感じがあって気になるのである。父の呪縛を感じるときも多かった。

 それは、ときに優作のほうに大きく振れる演技を見せるからだ。ぼそぼそとしたしゃべり、ひどくぶっきらぼうに振る舞ったりする。優作の場合は、それがひとつのスタイルになっていて格好良かった。ユーモアのセンスも抜群だった。ただ龍平がやると、少し無理な感じがあった。

 今週から公開される彼の主演作「泣き虫しょったんの奇跡」が、なかなか味のある作品になっていた。プロを目指す棋士の話だ。松たか子妻夫木聡小林薫國村隼イッセー尾形染谷将太ら豪華俳優陣に囲まれながら堂々たる主役を張っていた。それは、本作での演技が彼でしか表現できないひとつの形を示していたからである。

 瀬川晶司五段の自伝的作品だ。幼いころから将棋のプロだけを目指す人生とは、いったいどういうものなのか。羽生善治や谷川浩司たちのように突出した天才ではないが、才能はある。この役柄は難しい立ち位置だが、龍平はその難役に「普通さ」という武器をもってきた。

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