著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

故三上真一郎さん 「乾いた湖」で岩下志麻の“初キス”を

公開日: 更新日:

 俳優の三上真一郎さんが7月に亡くなっていたことを知り驚いた。享年77。このコラムで取り上げた三原葉子さん、高千穂ひづるさんもそうだったが、その逝去がマスコミでほとんど報道されない。お三方ともに忘れてはならない俳優である。

 松竹出身の三上さんだが、30代のときに出演した「仁義なき戦い」シリーズ(73、74年)の役が比較的知られるだろう。ただ筆者がすぐに思い浮かべるのは「乾いた湖」(60年)だ。篠田正浩監督の2作目で、岩下志麻映画デビュー作でもある。岩下が映画で初めてキスをした相手が、本作の三上さんだった。当時、10代後半だった三上さんは、はつらつとしていて格好が良かった。役柄的には岩下、高千穂、炎加世子らにモテモテの女性関係が、冗談ではなくどれほど羨ましかったことか。しかもこの3人と関係を断って、ひとり、テロに赴こうとするのだ。

 本作を70年代に見た筆者は、学生運動の欺瞞性や社会の拝金主義に背を向けて孤立していく三上さんの心情と行動に、気持ちがざわついたものだ。

 松竹系の優男の系譜からはみ出した街場のあんちゃん風スタイルが、「乾いた湖」でひとつのピークをつくったのだと思う。ときに内面が空疎になる瞬間があり、感情が先走る。まことにぶっきらぼうだから周囲はすぐに誤解をする。そんなタイプの若者像は今の時代のほうが共感されるのではないか。小津安二郎監督の「秋刀魚の味」(62年)では、そのやんちゃぶりがはぎとられたようで、おかしかった。三上さんは小津監督の心酔者でもあった。

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