中3で父が病に倒れ…高校入学と同時にアルバイトを始める

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新田恵利編<1>

 私の生まれた1968年は187万人以上の子どもたちが生まれた。戦後のベビーブームほどじゃないにしても、住んでいた埼玉県上福岡市(現ふじみ野市)は駅の両側にマンモス団地が並び、小学校は学区に7校、中学は1クラス45人で8組あった。

 父は大工で、母とは再婚同士。私には10歳離れた姉と3歳上の兄がいて、父56歳のときの娘だったから、一緒に歩いたりしていると、「おじいちゃんみたいだ」と悪ガキにからかわれた。おじいちゃんじゃないよっていつも思ったものだ。

 父は甘かったけど大正生まれ。家事は女の役目という昔かたぎの男で、小学校の入学と同時にリンゴと包丁を渡し、剥いた皮が一本につながるようになるまで練習しなさいと言った。母は日曜には家族分の洗濯を終わらせてからじゃないと遊びに行くことを許してはくれなかった。

 近所に女の子はあさこちゃんと私だけ。ピンク・レディーのネグリジェを着て、家の前の路地で「UFO」や「サウスポー」をふたりでやると、夕涼みがてらの近所のおじさん、おばさんの目をひき、そこだけのアイドルに。私はケイちゃんだ。

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