「月白」宇佐美まこと著
「月白」宇佐美まこと著
主人公は、事故で妻を亡くし息子に時間を割くため新聞社を辞めてフリーになったルポライター・海老原誠。ある日、月刊誌の編集長から、戦後に起きた連続殺人犯・北川フサのルポを書いてみないかと持ち掛けられる。当初乗り気ではなかった海老原だったが、男だけを殺しの対象としたフサという人物に強く興味を惹かれた。
海老原はひとりの女性が殺人者になった謎を解き明かそうとしたジャーナリストが書いた本を入手し、フサがある時期からひとりの少年と行動を共にしていたことを知る。殺人鬼と一緒にいた少年は何者なのか。海老原は老人になったその男の正体を突き止め、フサについて直接聞こうとするのだが……。
連続殺人鬼・北川フサの人生の底辺に流れる憎しみの感情に引き寄せられるようにして取材を始めた主人公は、フサと共にいた記憶を持つ老人との出会いのなかで、自らの負の感情をもあぶりだしていく。戦争で親を失った子や性を売る以外に生きるスベを持てなかった女性たちが抱えていた強い憤りはどこへ向かったのか。地獄絵図の戦後混乱期が物語から浮かび上がってくる。
(朝日新聞出版 2200円)



















