「月白」宇佐美まこと著

公開日: 更新日:

「月白」宇佐美まこと著

 主人公は、事故で妻を亡くし息子に時間を割くため新聞社を辞めてフリーになったルポライター・海老原誠。ある日、月刊誌の編集長から、戦後に起きた連続殺人犯・北川フサのルポを書いてみないかと持ち掛けられる。当初乗り気ではなかった海老原だったが、男だけを殺しの対象としたフサという人物に強く興味を惹かれた。

 海老原はひとりの女性が殺人者になった謎を解き明かそうとしたジャーナリストが書いた本を入手し、フサがある時期からひとりの少年と行動を共にしていたことを知る。殺人鬼と一緒にいた少年は何者なのか。海老原は老人になったその男の正体を突き止め、フサについて直接聞こうとするのだが……。

 連続殺人鬼・北川フサの人生の底辺に流れる憎しみの感情に引き寄せられるようにして取材を始めた主人公は、フサと共にいた記憶を持つ老人との出会いのなかで、自らの負の感情をもあぶりだしていく。戦争で親を失った子や性を売る以外に生きるスベを持てなかった女性たちが抱えていた強い憤りはどこへ向かったのか。地獄絵図の戦後混乱期が物語から浮かび上がってくる。

(朝日新聞出版 2200円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱照ノ富士が“弟子暴行”で角界に大激震! 転籍組との微妙な関係、燻っていた「無理やり改名」の火種

  2. 2

    競泳アイドル池江璃花子の初ロマンスに見えてくる「2つの夢」…りくりゅうに続くメダルともうひとつ

  3. 3

    侍Jで待遇格差が浮き彫りに…大谷翔平はもちろん「メジャー組」と「国内組」で大きな隔たり

  4. 4

    弟子を殴った元横綱照ノ富士 どれだけ潔くても厳罰必至か…「酒瓶で…」「女性を庇った」飛び交う情報

  5. 5

    Adoの初“顔出し”が話題 ミステリアス歌手の限界と20年非公表の「GRe4N BOYZ」との違い

  1. 6

    Snow Man宮舘涼太の交際発覚にファンが怒るワケ 「よりによって相手は女子アナ…」

  2. 7

    元横綱・照ノ富士の暴力事件で伊勢ケ浜部屋は評判ガタ落ち…絶頂期が一転「指導者も親も嫌がる」

  3. 8

    イラン攻撃に沈黙する高市外交の“二枚舌” 米国とイスラエルの暴挙に「法的評価は控える」の笑止

  4. 9

    イラン攻撃が招く原油爆騰インフレの恐怖「サナエノミクス」で庶民への打撃拡大…それでも「利上げ」に反対なのか

  5. 10

    熱意と覚悟が欠如…国内男子ツアーの衰退を加速させる日本ゴルフツアー機構の“残念さ”