二十歳の誕生日…たったひとつの“おめでとう”が欲しかった

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 卒業後も歌にドラマに写真集、旅番組にバラエティーと、言われるがまま、スケジュールに従って仕事をこなしていった。しかし、そうしたなかで、自分の人生を真剣に考えるようになっていく。

 東京に来て3年目、二十歳の誕生日にはこんなことがあった。成人式にも出られなかった私は、誕生日くらいはと、密かに恋人との約束を結んでいた。私も、7つ上の放送作家の彼も仕事。節目ということで、仕事が終わると関係者を大勢呼んで、事務所はパーティーを開いてくれた。たくさんの人、花、プレゼント。そして雑誌、テレビの取材。「おめでとう」の嵐。うれしくないわけじゃないけど、私にはパーティーというより仕事としか思えなかった。というか仕事だった。来てくださった方々も仕事だったはず。

 仕事も大事だけど私にとっては一生に一度の特別な特別な日だ。そして、彼が、誕生日を祝いに、私の家まで迎えに来てくれる時間が迫っていた。それは取材や何やらで瞬く間に過ぎていった。

 マネジャーに言うわけにもいかず、焦りを隠して平然とした顔をしていた。携帯のない時代、遅れるという連絡もできない。オートロックのマンションの玄関を走り抜け、エレベーターを待たずに階段で3階まで駆け上がる。息を切らしながら自宅のドアを開ける。そこで待っていたのは母だけ。彼はずっと車で待っていたようだが、プレゼントを母に託して自分の仕事に行ってしまった後。タッチの差であった。

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