二十歳の誕生日…たったひとつの“おめでとう”が欲しかった

公開日: 更新日:

 卒業後も歌にドラマに写真集、旅番組にバラエティーと、言われるがまま、スケジュールに従って仕事をこなしていった。しかし、そうしたなかで、自分の人生を真剣に考えるようになっていく。

 東京に来て3年目、二十歳の誕生日にはこんなことがあった。成人式にも出られなかった私は、誕生日くらいはと、密かに恋人との約束を結んでいた。私も、7つ上の放送作家の彼も仕事。節目ということで、仕事が終わると関係者を大勢呼んで、事務所はパーティーを開いてくれた。たくさんの人、花、プレゼント。そして雑誌、テレビの取材。「おめでとう」の嵐。うれしくないわけじゃないけど、私にはパーティーというより仕事としか思えなかった。というか仕事だった。来てくださった方々も仕事だったはず。

 仕事も大事だけど私にとっては一生に一度の特別な特別な日だ。そして、彼が、誕生日を祝いに、私の家まで迎えに来てくれる時間が迫っていた。それは取材や何やらで瞬く間に過ぎていった。

 マネジャーに言うわけにもいかず、焦りを隠して平然とした顔をしていた。携帯のない時代、遅れるという連絡もできない。オートロックのマンションの玄関を走り抜け、エレベーターを待たずに階段で3階まで駆け上がる。息を切らしながら自宅のドアを開ける。そこで待っていたのは母だけ。彼はずっと車で待っていたようだが、プレゼントを母に託して自分の仕事に行ってしまった後。タッチの差であった。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」