GWこそ! 本をもっと好きになれる本特集
「プラハの古本屋」千野栄一著
スマホで本を読む時代になっても紙の本はなくならない。それどころか、本に惑溺する人もしっかり生き残っている。そんな「書痴」とでもいうべき人びとを描いた本を紹介しよう。
◇
「プラハの古本屋」千野栄一著
言語学研究者の著者は、プラハで古本屋を回っていた。古本屋は貴重な本が手に入ると、土曜日の正午に店を閉め、その本をウインドーに展示しておく。すると月曜日の朝には店の前に行列ができ、開店と同時に客がなだれ込むのだ。
東欧の古本屋では、どんな珍本でも定価の3分の2で売るというルールがあるので、珍しい本を売る人は古本屋を通さず、個人的に高値で売る。古書を探すときは古本屋で探すよりも、こういう本を探しているとあちこちで触れ回ったほうが効率的なのだ。
ある日、「あなたに絶対必要な本がある」と電話があり、訪ねてみると、古代スラブ研究に不可欠な稀覯本が並んでいる。老婦人が、この本をあげるから、「本と同じ重さ」の河童グッズがほしいと言う。(「共産圏の古本屋」)
古書をめぐる出会いを描くエッセー。 (中央公論新社 1155円)
「『奇譚クラブ』とその周辺」濡木痴夢男著
「『奇譚クラブ』とその周辺」濡木痴夢男著
大衆娯楽雑誌「奇譚クラブ」は1947年に創刊された。いわゆる「カストリ雑誌」で、当初は実話通俗誌だったが、アブノーマル性愛をテーマにした雑誌に変貌する。
「奇譚クラブ」の扉絵を描いていた杉原虹児は、縄で自縛を試みる女のイラストを描いているが、その縄の動きの表現がひどく正確である。実際の緊縛テクニックを知らないと描けない構図で、マニアの読者にはそれがわかり、この雑誌がホンモノで、自分たちの味方だと認識するのだ。
読者の投稿も多く、検閲のため一部が白塗りとなったイラストに、革鞭を持った自分の腕を描き加えた作品が投稿されたりした。
ほかに、SM雑誌「裏窓」や、女相撲小説「ふたり妻」など、伝説の雑誌や作品と、それを熱狂的に支持したマニアックな読者たちのエピソード集。 (河出書房新社 1100円)
「本に狂う」草森紳一著、平山周吉編
「本に狂う」草森紳一著、平山周吉編
以前、毛沢東の寝室の写真で、ベッドの半分が3列に積み上げられた本に占領されているのを見た。毛沢東は一日の大半を寝室で過ごしていて、普通のダブルベッドの2倍もありそうな巨大な特注のベッドで本を読んでいた。政治への応用のため、学究的な読み方をしていた毛沢東のベッドの上は、あの本この本と読みちらかしっ放しになる。シーツの上は散乱状態だが、でたらめに置くのではなく、次にその本を読むとき、迷わぬような置き方をしたのだろう。
毛沢東は少年時代、野良仕事をするときも懐に本をしのばせていき、父のすきを見ては墓場の木の下で本を読んでいたという。
ほかに、少年時代にはまった手塚治虫のマンガや陶淵明の漢詩などについてつづった草森紳一のエッセーを収録。 (筑摩書房 1210円)
「増補復興の書店」稲泉連著
「増補復興の書店」稲泉連著
東京都板橋区にある中央社は、地方の中小の書店に本を配本している。2011年に東北で大震災が起きたとき、取引先の書店に必死で電話をかけたが通じなかった。3日後に被災地の取引先から状況を伝えられた。「お店は全部ダメです」
新幹線が福島駅まで動き始め、中央社の斎藤さんは同僚と2人で福島に向かった。避難所に週刊誌と文庫本があるのを見て、斎藤さんは、電気が復旧していない場所では紙に書かれた情報が頼りだと気づく。
岩手・宮城・福島の3県では70以上の書店が全半壊した。もう廃業するという書店もあったが、残った軽自動車などで、震災前の注文や定期購読の雑誌などを律義に配達する書店主も少なくなかった。
震災後の逼迫した生活の中でも本を求めた人たちの記録。 (岩波書店 1331円)



















