(28)多摩で酌み交わす祝い酒
お世話になった編集者が引退される。その前に一献どうだとお誘いをいただき、国分寺にある私の好きな酒場にご案内した。
私より3学年先輩だが、世代としては同世代。とりわけ昔の話になると、共通の話題に事欠かない。飲めば、話はあちこちに飛んで、こちらも甘えた感じが少し出て、気ままに質問し、そのたびに、先輩の博識に感心させられる。互いに短くもない人生を生きてきて、さまざまなことへの処し方の違いもまた、会話の調味料になる。
ビールは1本だけにして、剣菱の樽酒を飲み、もう飲みすぎはいけないからと、9時には上がろうといいつつ、10時過ぎまで喋り尽きなかった。
お疲れ様でした。これからも、よろしくお願いします。こちらが送り出すべきなのに、ご馳走になってしまった。
それには理由がある。私はその日が誕生日だった。63歳。自分が63歳まで生きることを、若いころに考えたことがない。けれど、生きている。バカみたいに酒を飲んできたのに、ピンピンしていて、マス酒がうまいのだ。その思いを話したら、先輩はご自分の慰労の酒なのに、こちらの勘定も面倒見てくれた。私は、こんなことばかりしてきたな……。振り返ってそう思う。
















