艶やかな「地獄門」故・京マチ子さんが演じる悲しき献身愛

公開日: 更新日:

 本作の盛遠は無法のストーカーだ。袈裟はその征服欲を恐れて夫の身代わりになる覚悟を決めた。この選択について「夫に頼んで盛遠を斬り捨てればよかった」との声が聞かれるが、それでは袈裟の心情を理解できない。伏線があるのだ。

 注目は冒頭で袈裟が上西門院の身代わりを買って出たこと。敬慕する人物に命がけで尽くすのが彼女の生き方なのだ。

 もうひとつ。もし渡が盛遠を成敗したら、単なるストーカー男の撃退ではなく、武家と武家の争いに発展するかもしれない。そのとき清盛が盛遠をかばえば渡は不利になる。袈裟は無益な闘争を避けるために、渡の寝顔に「おすこやかに」と別れを告げ、我が身を犠牲にしたのだと解釈したい。女性の立場が弱い時代だった。

 袈裟の献身愛と盛遠の豹変に、66年前の欧米人はどんな哲学を見いだしたのだろうか。 (森田健司)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景