「アマデウス」神は下劣な若造を天才に選んだ

公開日: 更新日:

1984年 ミロス・フォアマン監督

 アカデミー賞作品賞など8部門を受賞。先日、BD&DVDのセットが発売された。

 モーツァルト(トム・ハルス)の死から32年、宮廷作曲家のサリエリ(F・マーリー・エイブラハム)が「彼を殺したのは私だ」と自殺を図った。彼は精神病院で神父にかつてモーツァルトが自分の曲をちゃかし、声楽家の美女に遊びで手をつけたことなどを告白。モーツァルトは甲高い声でバカ笑いする変人ながら、比類なき才能で皇帝の心をつかみ、「フィガロの結婚」の上演などに成功した。

 だが弱点もあった。酒に溺れ、稼いだ金を一晩で使う浪費家なのだ。モーツァルトを憎むサリエリは黒い仮面で変装してレクイエムの作曲を依頼するのだった……。

 モーツァルトの放蕩(ほうとう)ぶりは野口英世さながら。

 何とかと天才は紙一重だ。若者が大人を負かす姿は藤井聡太七段や仲邑菫初段のごとし。大人は内心穏やかではない。

 本作は中年男が若き才人に嫉妬する物語。サリエリはモーツァルトのオリジナル譜面に直しがひとつもないことに愕然とし、その美しき旋律に打ちのめされる。だが彼が天才であることが許せない。「神は私でなく、下劣な若造を選んだ」と苦悶するうちにモーツァルトの音楽が神の呪いとなって響いてくる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度不倫の山本モナ 年商40億円社長と結婚&引退の次は…

  2. 2

    日本ハムFA松本剛の「巨人入り」に2つの重圧…来季V逸なら“戦犯”リスクまで背負うことに

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  5. 5

    「存立危機事態」めぐり「台湾有事」に言及で日中対立激化…引くに引けない高市首相の自業自得

  1. 6

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  2. 7

    (2)「アルコールより危険な飲み物」とは…日本人の30%が脂肪肝

  3. 8

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  4. 9

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 10

    高市政権の物価高対策はパクリばかりで“オリジナル”ゼロ…今さら「デフレ脱却宣言目指す」のア然