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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

「まだ結婚できない男」主人公はそのままも周囲に変化が…

公開日: 更新日:

 阿部寛主演「結婚できない男」が放送されたのは2006年。主人公の建築家、桑野信介は当時40歳だった。

 高身長、高学歴、高収入で独身。かなり独善的かつ偏屈な性格で、言わなくてもいいことを口にする皮肉屋でもある。自分の事務所を持ち、マンションで一人暮らし。クラシック音楽をフルボリュームで流して指揮者の真似事をするのが趣味だ。

 13年後の復活となった「まだ結婚できない男」だが、桑野はちっとも変わっていない。独善・偏屈・皮肉も相変わらずで、外では「一人しゃぶしゃぶ」を味わい、家では指揮棒を振って一人悦に入る。そんな主人公の「相変わらずぶり」を、苦笑しながら眺めるのがこの続編の基本的な楽しみ方だ。

 本人は変わらないが、周囲には変化がある。かつて関わりのあった内科医(夏川結衣)は弁護士(吉田羊)に、隣人女性国仲涼子から深川麻衣になった。そこにカフェの店長(稲森いずみ)が絡んできそうだ。とはいえ、桑野はもともと「結婚できない」のではなく、「結婚したくない」のである。女性たちとの関係も、価値観や距離感のズレが生み出す笑いどころだ。50歳以上の男性未婚者が23%を超える現在、53歳の桑野も特別な存在ではない。13年前と一番違うのはこの社会的背景だ。現実に埋没しない、より積極的な「中年シングルライフ」の提示。それが今回の課題となる。

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