第15回日本アカデミー賞最優秀作品賞「息子」は父親の物語

公開日: 更新日:

 哲夫は都会の片隅で、かよわい征子を支えて生きるつもりだ。決意は固い。不甲斐ない息子はいつの間にか優しくたくましい男になっていた。我が子の成長を知った父は喜びで寝つけない。夜中に息子を起こし、ねじり鉢巻きで「お富さん」を歌う。「あの子を岩手に呼んでお披露目せねばならんなぁ」という父は宝石のような嫁を近所に自慢したいのだろう。その一方でハンディのある女性を伴侶に選んだ我が子を誇らしく思ってもいるはずだ。

 征子と連絡をとるために父はファクシミリを持って岩手に戻り、近所の者に「幸せだ」と言う。雪に覆われた一人住まいの家に明かりがともるラストは、間もなく訪れる征子のお披露目の宴を暗示していると解釈してもいい。

 長男の妻に「人知れず死んでもかまわない」と言いきった父は、征子が孫を産んだら面倒を見なければならないと笑う。生きる張り合いを得た父はまだまだ死ぬわけにはいかない。

(森田健司/日刊ゲンダイ)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    萩本欽一〈47〉気仙沼ちゃんは民宿4軒経営の大女将に 説教してテレビで夫を募集させた甲斐があった

  2. 2

    阿部慎之助にした「今ならパワハラで即クビ」の指導&落合博満から学んだ仰天トレーニング

  3. 3

    モグライダーともしげが埼玉の中高一貫ミッションスクール聖望学園で打ち込んだアメフト《26年夏番外編》

  4. 4

    千葉秋季大会開幕も専大松戸が「来春センバツを狙う」と宣言できない切実なチーム事情

  5. 5

    萩本欽一〈46〉斉藤清六が泣きながら持ってきた1000万円、追い返そうと思って貯金額を聞いたら驚いた

  1. 6

    広島4番栗原に敵将・落合監督は「四球でいい」と助言を…

  2. 7

    timelesz猪俣周杜「傷害容疑で逮捕」に“ダブルでガッカリ“…ファンの計り知れない失望

  3. 8

    菊池風磨はジャニー喜多川氏の“推薦”もあって慶大総合政策学部に進学 仕事の合間に1日10時間の猛勉強

  4. 9

    萩本欽一〈45〉斉藤清六を全国区にした誰も知らない裏話 “弟子入りNG”から評価を一転させたんです

  5. 10

    4度結婚した宇野千代の“不倫”をNHK朝ドラ「ブラッサム」はどう描く?「カーネーション」は真正面から