「ELLE」父親のトラウマを引きずる女 性欲と葛藤する物語

公開日: 更新日:

 こうした人間の原罪ともいえる欲望の衝突を、映画は入り組んだ人間関係を通して追究する。ただし話は分かりやすく、結末の落ちも秀逸だ。筆者は見終わったときM・デイビスの「死刑台のエレベーター」を聴きたくなった。

 見どころは地下室でのセックス。男がペニスを抜いたあともミシェルは股間を押さえ、床の上で身悶えしながら、終わりのないエクスタシーに悦楽の咆哮(ほうこう)を上げる。まさに熱演。このミシェルの姿態こそが本作のテーマを語ってくれるのだ。

 日本の若い観客は「何が言いたいのか分からない」と拒絶反応を示すが、欧州人はこうした性欲のミステリー映画を好む。共感し、支持する。ハリウッド映画に飼いならされた若者には分かるまい。

(森田健司)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ