著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

映画賞はNO眼中?「今日から俺は!!劇場版」白々しさが潔い

公開日: 更新日:

 映画を見終わって場内の照明が明るくなるや、「面白い」という声が背後から聞こえた。30代くらいの男性だ。この面白いは「笑えた」ということだろう。ただ実のところ、この面白いという言葉が本作にとっては曲者だ。映画全体を通して「面白い」ということはないからだ。

 笑いが確かにある一方で、笑いがどうにも弾けず、白々しい空気感(昔は「しらけ鳥が飛んで行く」といった)が漂うシーンも少なくない。笑いを意図したシーンが、ときどき目もあてられないほど白々しくなる。いわゆる、外しっぱなしというわけだ。

 普通なら笑いの演出が下手とみなされ、致命傷といえるだろう。だが、本作はそうならない。「銀魂」などで知られる福田雄一監督の作風が、あえて、外しにかかっているとも考えられるからだ。監督は分かって、しらけ鳥を飛ばしている。

 たとえば、橋本環奈が途端に“ぶりっ子”(死語か)をするシーンでは彼女が話し終わるや、ある人物が「くだらないものを見せつけやがって」と言い放つ。それは、観客こそが言いたいことだ。監督の盟友である佐藤二朗の登場シーンでは、確信犯的な外しの連続が不気味でもある。佐藤独特のもにゃもにゃした言い回しで、効果音を真似た言葉を喋る場面など笑えるはずがないのに、延々撮り続ける。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い