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荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<4>父の死、母の死によってオレは写真の修業をさせられた

公開日: 更新日:

 三ノ輪の実家の「にんべんや履物店」は小さな店だったから、親父が一人で何でもやってたけど、おふくろも手伝ってた。親父が死んでから、おふくろが下駄の鼻緒をすげてたね。「いつ練習したんだ」って聞いたら、「見よう見真似で覚えた」って言って、女手ひとつですげてたよ、力を入れて。おふくろは、あんまり口数が多くないけど、上州の女で、やっぱり気丈だったね。ちびでね。オレは7人きょうだいの5番目だけど、小さい頃は、そんなおふくろが7人も子どもを産んだのが不思議だったね。

 親父は、おふくろに頭あがらなかったんじゃないかな。親父は写真やってて、旅とかなんとか言って何日も戻らなかったりしてたらしいからね。自転車の後ろに下駄を入れる箱をつけてるんだけど、その箱の中にカメラを仕込んで出て行って、一日帰って来ないっていうこともあったらしいんだ。その間、街で写真を撮ってたらしくてね。

 店には、職人の親父が作ったデカイ下駄の看板があっただろ。おふくろはいつも、オレが遠くに遊びに行ったら、「下駄の看板を目印に帰ってくるんだよ」と言ってたね。

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