追悼・若松武史さん 毒と華を併せ持つ希代の俳優だった

公開日: 更新日:

散歩の日課を欠かさず

 96年のテレビドラマ「外科医柊又三郎」に医師役で出演した際に、甲状腺がんの患者を問診するシーンで自分の症状に当てはまることに気づき、監修の医師に相談したところ甲状腺がんが発覚。手術の際に声帯が傷ついたため、一時、声を失ったが必死のリハビリで奇跡的に回復。舞台に復帰した。しかし、肺炎を起こすなどして一昨年から治療に専念。昨年8月から自宅療養を始めたばかりだった。

 余命を宣告され、画家志望だった若松さんが書きためた絵の個展を「生前遺作展」として行う予定だったが、それを本人が見るのはかなわなかった(同展は7月に開催予定)。

 命旦夕に迫っても酸素ボンベを背負っての散歩の日課を欠かさず、ポジティブな姿勢を持ち続けた。

 妻・由美子さんによれば、亡くなった朝も、自分で切り分けたパンを食べてくつろいだ後、突然体から空気が抜けるように崩れ落ちたという。

 まるで俳優が出番を終えて舞台から退場するかのように、まばたきする間に彼岸への川を跳躍した若松さん。「毒」と「華」を併せ持つ希代の俳優にふさわしい従容とした最期だった。

  合掌

演劇ジャーナリスト・山田勝仁)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー