関野吉晴さん グレートジャーニー探検家の地球永住計画

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関野吉晴さん(冒険家、医師/72歳)

 フジテレビが1995年から2012年にかけて放送した本格派ドキュメンタリー「グレートジャーニー」シリーズ。アフリカ東部で生まれた人類が南米の最南端までたどり着く足跡を逆ルートで進む冒険、そして日本人のルーツを探る旅は大いに注目された。それを企画し、自ら挑んだのが関野吉晴さんだ。さて今、どうしているのか?

「昨年3月で文化人類学を教えていた武蔵野美術大学(以下、武蔵美)を退職しまして、今は名誉教授なんです。医師としては非常勤で多摩川病院(東京都調布市)と麻布医院(同港区)、そして渋谷でモルフォセラピーの関野吉晴クリニックを開業しています」

 関野さんと会ったのは都内吉祥寺。国分寺市の自宅から出向いてくれた。

「武蔵美での授業は学者を養成しようというのではなく、知識が偏りがちになりやすい芸術家の卵たちの引き出しを増やすべく、僕が自らの足で歩き見てきたことを紹介する授業でした。なので、『グレートジャーニー』のことはもちろん、学外授業として1年かけてカレーを作ったりしてたんですよ」

 カレー作りに1年?

「すべての材料をイチから学生たちと育てて栽培し、調理するんです。例えばビーフカレーなら子牛から育て、ご飯はモミを発芽させて田植え、稲刈り、精米。ジャガイモやニンジン、タマネギも同じです。それらを行うことで、命の循環を知り、共生を学べるわけです」

 モルフォセラピーとは?

「人体というのは左右非対称です。脊椎が左にずれることによって腰痛肩こりが起こる。それを手指で矯正すると痛みが軽快するのですが、創始者と同じ施術をすると誰がやっても治ります。これはサイエンスなんですよ」

 その一方、15年から「地球永住計画」を始めた。

「今や科学者のテーマとなっている惑星移住ですが、地球という“奇跡の星”で私たちがどうしたら生き続けていけるのか? をテーマに、専門家と市民がともに向き合い再確認するところから始めようというプロジェクトです。昨年1月までは武蔵美で月4回前後、講師をお招きしたセミナーを開催していたのですが、新型コロナのため今はリモートでやっています。先程の『モルフォセラピー』とともに、メールマガジンやフェイスブックなどのSNSで情報発信していますから、ご興味がありましたら検索してみてください」

 ユーチューブでは「探検家・関野吉晴【グレートジャーニー】」を配信しており、昨年9月から「グレートジャーニーをもう一度」シリーズがスタート。4月26日現在、29作がアップされている。

「今、同じような旅をするのは絶対無理」

 関野さんが海外へ冒険旅行に出かけるようになったのは一橋大学法学部入学後。探検部を創設し、さらに社会人山岳会や早稲田大学探検部の準部員として活動した。

 1971年から72年にかけて大学を休学し、アマゾン川を探検。以降、南米各地の原住民たちと交流を深めた。

「いつもお世話になっていたので、医療で恩返しをしようと思ったのが医師になるきっかけでした」

 33歳だった82年に横浜市立大医学部を卒業。その後、外科医として病院勤務をしながら南米行きを継続。奥さんの玲子さんは津田塾大探検部の元部長で、卒業の年に結婚した。

「翌年、一人娘に恵まれたのですが、93年から毎年『グレートジャーニー』のために9カ月前後は家にいない生活でしたから、今でも家内には頭が上がりません。娘が幼い頃は2人っきりになると何を話していいのやらわからず、お互いに困ったモノです(笑い)」

「グレートジャーニー」後、次に挑戦したのは日本人のルーツを探る「新グレートジャーニー」シリーズ。こちらは「北方ルート」「南方ルート」「海洋ルート」の3作が06年から12年までフジテレビで放送された。

「最初の『グレートジャーニー』を完遂できたことは、ラッキーだったとしか言いようがありません。中米の内戦がほぼ収束し、自由に旅ができなかったソ連が崩壊、中東は現在ほどの混乱状況ではなかった。紛争地域も通過しましたが、今、同じような旅をするのは絶対無理。平和のありがたみを改めて感じますね」

(取材・文=高鍬真之)

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