オリラジ中田も株で億万長者だが…金融庁投資推奨の危うさ

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 ユーチューバーとしても活躍するオリエンタルラジオの中田敦彦氏(38)は、米国株などに投資してウン億円の財産を築いたといわれる。会社(吉本興業)も辞め、春から節税効果のあるシンガポールに家族と共に移住している。目指すは悠々自適の中田氏だが、庶民にとって投資の前にネックとなるのは「タネ銭」のつくり方だ。

   ◇  ◇  ◇

 経済の拡大より資本の取り分が上回る――。

 トマ・ピケティが「21世紀の資本」の中で語った内容だ。ピケティは「だから労働者の賃金を上げるべきだよ(公平分配)」という主張につながるのだが、いかんせん日本人の平均年収436万円(2019年)は、05年の437万円と比べて1万円しか変わらない。というか、下がっちゃっているのだ。

 なのに税金と社会保障費のアップで手取り額は減りっぱなし。ファイナンシャルプランナー深田晶恵氏の試算によると、額面700万円世帯(専業主婦、子2人)で、2002年から2018年までに50万円も手取り額が減少しているという。

 そんな折、天を仰ぎつつ本屋に入ると、「誰でもラクに1億円儲けられる」「初心者でも稼げる」といった類いの投資指南本がうずたかく積まれている。やはりここは上昇する株式相場に乗っかって資産運用を始めるべきなのか?

個人投資家は「タネ銭」をつくる段階でアウト

 NYダウはこの30年間で約10倍、2010年から20年までの10年間で見ても1万1000ドルから3万3000ドルへ3倍も値上がりしているのだ(グラフ参照)。

 もっとも、投資するにしても元手となるタネ銭が重要。50万円や100万円を運用して2倍になったところで、さほどのぜいたくはできない。

 では、個人投資家はいくらぐらい金融資産を保有しているのか。「金融広報中央委員会」によると、平均は1436万円(2人以上世帯=2020年)。投資に挑戦するには、少なくともこれぐらいは欲しいところだ。

 その元手を用意するには「ためる」「ふやす」「(支出を)へらす」の3つの方法がある。

 ただし、手取り額が減っている現状では、これ以上の倹約には限界があるだろう。となると、選択肢は「ためる」か「ふやす」の2択になるが、子持ち家庭には預貯金に回すお金などそうそうあるはずもない。そこで中学校卒業まで国から支給される「児童手当」を貯蓄に充ててみたい。0~3歳未満が月1.5万円、それ以降は月1万円もらえるので、トータルで200万円ほどになる。

ひろゆき「貧乏人に儲け話は来ない」、ホリエモン「養分になるだけ」

 次に「ふやす」だ。オリラジ中田氏も推奨しているのが、比較的リスクの小さい投資信託。とくに「つみたてNISA」なら最大20年間は非課税(2037年まで)で運用できる。児童手当の月1万円を運用収益2%で積み立てると、10年後には12.7万円の運用収益を含め132.7万円に増えている。20年間の積み立てなら54.8万円増の294.8万円だ(表参照)。

 だが、これではまだまだ足りない。そこで休日をつぶしてアルバイトしてみたい。現在、東京都の平均時給は1317円(求人サイトのイーアイデム調べ)。1日8時間で日当はほぼ1万円。年間50日働けば、20年後には1000万円ほど貯まる計算。このお金をNISAで運用すれば、さらに運用収益が得られる。

 これでようやく個人投資家の平均的な保有額に達することになる。30歳から始めて50歳になる頃に、ようやく個人投資家の仲間入りが果たせる。

 とはいえ、この程度のタネ銭ではプライベートバンクは歯牙にもかけてくれない。クレディ・スイスに口座開設するには5億円の最低預金が必要。三菱UFJモルガン・スタンレー証券なども1億円が最低ラインとなっている。仮に口座が開設できれば、勝手に新規公開株などおいしい儲け話を振ってくれる。

「株で勝つ人というのは、つまり失敗しない人のことを言います。それは最低ロット10億円から相手にしてもらえるプライベートバンクの顧客などのことです。私はもうすぐバブルは崩壊するとみていますが、その時、痛い目を見るのは庶民の個人投資家です」(金融アナリスト・森永卓郎氏)

 時あたかも、投資会社「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」の証拠金不足で野村証券が2200億円の損失を出したばかり。クレディ・スイスの損失は5000億円を超える見込みだ。これですぐにリーマン・ショックの二の舞いになるわけではないが、嫌なニオイはプンプンしてくる。

 そもそも、世の中で儲け話を持ってくるのは詐欺師かペテン師ぐらいなもの。「2ちゃんねる」開設者のひろゆき氏も「貧乏人に儲け話は来ない」と言い切っているし、実業家の堀江貴文氏も「(金持ちの)養分になるだけ」とそっけない。2人は投資自体が悪いと言っているのではなく、ラクして儲けられるほど投資の世界は甘くないとクギを刺しているのだ。

■一晩で1億円稼ぐのは“人の道”かどうか

「確かに、株で一晩に1億円を稼ぐ人もいます。ですが、それが果たして“人の道”と言えるのかどうか。金融庁は今、小学生からマネーリテラシーを勉強させ、〈貯蓄〉から〈投資〉へ向かわせようとしています。コツコツ貯蓄するような人は、金融知識に乏しい劣った人間であるかのような風潮さえあります」(森永卓郎氏)

 金融庁はホームページで投資の基本について、「投資のリスクはいわゆる〈危険〉や〈損失〉のことではなく、〈可能性〉のこと」と説明している。例えば、株価変動リスクは「株の価格が上下する可能性のこと」といった具合だ。リスクを可能性に置き換えるのはどこかで聞いたことがある気がするが、高額な絵画を将来値上がりする〈可能性〉といって売りつける「絵画商法」もそのひとつ。ちなみに、日用品などを無料で配って「もらわないと損」という心理にさせ、最終的に言葉巧みに高額商品を売りつけるのが催眠商法だ。

 コロナ禍のリモートワークで自宅に居ながら株を売買しようという個人投資家が増え、一部ネット証券の口座数は1年前に比べ20%以上も増加している。

 ラクして1億円儲けられるのはいいが、それが果たしていい世の中と言えるのか。 

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