「いま、バックミラー見たな」「ええ、2回目です」路上で繰り広げられる攻防戦

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「ただいまタクシー乗車。ナンバーは……」

 某民放の社屋の外に設置された喫煙スペース。そこから見渡せるタクシー乗り場から、ターゲットが後部座席に腰を降ろした一台が走り出す。それをさりげなく注視しながら、記者はスマホに囁く。チームの連絡はトランシーバーや無線がメインだったが、そういう目立つことはほとんどしない。

「了解!」

 メッセージにすぐさま応じたのは、局の出入り口付近で待機していた別の記者。ターゲットのタクシーがウインカーをつけて公道を走り出すと、2台の車両をはさんで、静かに尾行をスタートさせた。

 個人情報保護がかまびすしいなか、違法駐車で困っているなどと理由をでっちあげ、陸運局で車のナンバー照会すれば所有者の住所が簡単に割れるという時代ではもはやない。取材陣はそれこそ、あらゆる手を駆使して当たるが、そこは敵もさるもの。住民票を実家や事務所にして、現住所を分からないようにする芸能人は少なくない。

 そのためドラマの撮影現場に打ち上げ、イベントなど、仕事で姿を見せる現場に行って、帰途を追いかけることもあれば、この日のようにレギュラー出演する番組収録に合わせてテレビ局前に張り込むことだってある。

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