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細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

飯野矢住代誕生秘話<18>世間に求められるがままの「虚像」を忠実に演じていたのか

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 ともかく、マスコミは矢住代を放っておかなかった。「週刊女性」(1970年10月3日号)は「別れてよかった 若すぎたゆえの破局」と銘打った特集記事を組んでいる。「別れた理由は?」という月並みな質問に「私たち、強くなるために結婚したの。それで、強くなったから、それぞれの道へ飛んで行くことにしたの」と、またも掴みどころなく答え、かと思えば、「結婚してよかったと思うわ。おいしいもの、お洗たくしたきれいなもの、それを彼のために作ってあげるよろこび。私は結婚して、はじめてそれを知ったんですもの」と、実際は未入籍だったにもかかわらず、「結婚」を強調しながら気丈に振り返ってもいる。その心情は次のコメントからもうかがえる。

「イヤなことは、頭のこっちがわにあるの。そして、こっちがわの頭で、いつも夢を見ているの。うん、イヤなこと忘れてはいません。でも、思い出さない。自分に必要なときだけ、パッと思い出すの」

 さらにこうも言う。

「花屋さんにある菜の花をね、ぜんぶ買ってしまうの。それを胸にかかえて、そして、風が強い日に、頭の地まで風が吹きとおるような日に、長い髪をこう吹きなびかせて、街を歩くの。私、そんなときが、最高に幸福なの……」

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