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増位山太志郎元大相撲力士

1948年11月、東京生まれ。日大一中から一高。初土俵は67年1月場所、最高位は大関。引退は81年3月場所。引退後は日本相撲協会で審判部副部長を務めた。74年「そんな夕子にほれました」、77年「そんな女のひとりごと」などがヒット。画家として二科展入選の常連。「ちゃんこ増位山」(墨田区千歳)を経営。

<12>美空ひばりさんが親父に「結婚してるの?」大物歌手でも気さくに話しかけてくれた

公開日: 更新日:

 歌手としてテレビに出るようになって、美空ひばりさんともテレビ東京の番組で共演したことがあります。その時はうちの親父も北の湖さんも出演したように記憶しています。

 ひばりさんの歌をギターで伴奏していたのは名手といわれた木村好夫さんでした。木村さんは上がったり下がったりする乗りモノに乗って弾いていたのかな。どんな加減なのか、あの木村さんがイントロで間違えちゃってね。ひばりさんに「どうしたの?」と声をかけられていました。ひばりさんを前にしてあの木村さんでも上がっちゃったんだろうね。ひばりさんのオーラはそれぐらいすごかった。

 その時、うちの親父がひばりさんに「増位山さんは結婚してるの?」と声をかけられて。親父が「してますよ」と答えたら、「じゃ、ダメね」って。何がダメなのか。あれはどんな意味だったのか、今もわからない(笑い)。そして「こっちの世界の邪魔しないでよ」と笑いながら言ってました。

歩くのがつらそうだったペギー葉山さんに…

 ペギー葉山さんとも親しくさせていただきました。ペギーさんといえば「南国土佐を後にして」です。はやったのは僕が中学生の時かな。あの頃夏の盆踊りは「南国土佐を後にして」で踊ったものです。だからペギーさんは憧れのスターです。僕らが気軽に話しかけることができるような人じゃなかった。ところが、その世界に入ったら普通に話すことができた。夢物語みたいな話です。ペギーさんは相撲も大好きで話しているうちにいつも相撲の話題になりました。

 僕が定年で協会をやめて、審判長をやっている時に向正面の席でペギーさんをよく見かけました。でも、ある時からプッツリと見かけなくなった。「最近テレビに映っていませんね」と言ったら「連れて来てくれる人が亡くなっちゃったの」と言っていました。

 テレ東の「年忘れにっぽんの歌」では何度もご一緒しました。お年を召してからは歩くのをつらそうにしていた時もあったので、よく手を貸して差しあげたりしました。

 ペギーさんとは通っている病院が同じで主治医も一緒でした。先生にペギーさんのことを聞いたら「この前も来て、元気ですよ」と言っていたのに、それから1週間くらいしたら亡くなって。あの時は驚きましたね。

 そんなふうにひばりさんやペギーさんから気軽に声をかけてもらえるのは僕がもともと違う業界の人間だったからです。チョンマゲをつけた力士だったから。普通にデビューした歌手の場合はそうはいかない。そもそも歌手同士ならお互いにプライドを持っているから、気さくにベラベラ話しかけたりしないでしょ。僕が歌の世界の人間じゃなく力士だからです。得だと思いましたね。

 一つのことだけじゃなく、別のことも一緒にやっていると世界が広がるということです。

 ただし、勘違いしちゃいけないのは僕の場合は力士になったから、歌手にもなれて、成功することができたということ。力士になっていなかったら歌手にもなってないし、レコードも出せなかった。力士として精いっぱいやっていた延長線上ですごくいい流れになったんです。=つづく

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ

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