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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

どいつもこいつもが「世の中カネで買えないものはない」と勘違いしてる

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 世界中の映画がつまらなくなった。大人が見るものが探してもないのだ。アメリカの知人も「まだ見てないの? 席を立てなくなるよ」と言わなくなった。イーストウッドの「許されざる者」はもう30年前だが、東京・築地の大劇場で20人ほどのサラリーマン客と見たのが、それが感動の最後だ。

 仕事上も含め、月に5、6本は作品を見るから、10年間で500本は見た。しかし、なんでここまでつまらないんだろ。コロナで大人が映画館に行かなくなったからじゃない。ずっと前からだ。娯楽にも気慰みにもならないガキとミーハー専用のクズ映画が増えた。しかも、昔の三流のハリウッド製をモノマネした勧善懲悪の悪夢から抜け出せていない。気持ちがスカーッとする映画もない。画面の格調も役者の演技もどうでもいい、スジを追うだけのおとぎ話だから、客は2時間暇をつぶした後、見たことを早く忘れたいような顔をして席を立っていく。フィルムじゃないデジタル画面やCG合成で映像派のカメラマンでなくても画像は容易に撮れるし、色合いも空気感もどうでもいい作り方だ。いまだに、マーベルスタジオが製作してディズニーが配給する漫画モノが性懲りもなく出回るが、あんなものこそ何の気晴らしにも暇つぶしにもならないし、何の役にも立たない。見るのに脳ミソは使わないから誰もカネを返せとは言わない。口を開けて眺めてるだけだ。

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