加藤登紀子さんは78歳の今も“ほろ酔いコンサート”「飲んでいる方が歌詞は間違えない」

公開日: 更新日:

「知床旅情」「百万本のバラ」など数々のヒット曲で知られる加藤登紀子さん。ライフワークとして1971年から続けている年末恒例「ほろ酔いコンサート」を今年も各地で行う。日本酒が大好きな加藤さんの酒人生をうかがった。

 ◇  ◇  ◇

「ほろ酔いコンサート」がスタートしたのは71年ですから、それから半世紀以上、今年で50回目になります。

 71年、この年は私にとってすごくビッグな一年でした。「知床旅情」で日本レコード大賞で2度目の歌唱賞を受賞し、初めて「紅白歌合戦」に出場しました。

 あの頃、私の周りには新聞記者が多くて、何かおかしいことをやろう、正統派じゃないことをやってほしいというので「おときと酒の会」が発足して、酒好きのコンサート「登紀子22時」を日劇ミュージックホール(MH)でやることになったのね。その時は、まさかずっと続けることになるとは思わなかったですね。彼らも「よくやった、おときもいよいよ大きな舞台に乗ったね」というくらいの気持ちだったと思います。

 第1回は飲ませ過ぎたと思いましたね。当時のことだから、タダ酒なら徹底的に飲むぜ、みたいな人がいて、信じられないくらい酔っぱらったお客さんがいた(笑)。シラフで歌っていた私も「もうやってらんない」とお酒を持ってきてもらってステージで飲み始めました。あの時「大関」さんは、どれくらいお酒を用意してくれたのかしら。

 ところが、その翌年に私は、あろうことか結婚してしまったわけです。一切を投げ捨てて(学生運動の活動家だった藤本敏夫さんと獄中結婚)。その時は、もう歌手はやらないと考えていました。

 でも、シャンソン歌手の石井好子さんに「歌手をやめるかやめないかは誰にも言う必要がないのよ。あなたは社会に責任を果たすために歌手をやっているんじゃないんだから、やりたくなったら好きにしなさい」と言ってくださった。その言葉は大きかったですね。

 結婚してわかったのは歌いたくてたまらないという気持ちです。それで73年に30歳の記念で「花開く30歳」というお酒付きのコンサートをやることになり、その時、71年の日劇MHという帰る場所があったという感じですね。

 それから毎年コンサートを続け、「ほろ酔いコンサート」という名前が定まったのは77年からです。その年から大阪でも始まり、全国を回るコンサートが定着していきました。

 歌手と聴衆が本気で語り合おうぜ、よそ行きの歌はダメと本音でぶつかるステージです。今は杯にしていますが、以前はグラスで飲んでいると俺にもくれとコップを差し出す人もいました。その時は受けて立って「あなたにはあげられない」とか厳しく言ったりね。ステージの上に聴衆をあげて車座になり、そのうちに踊ったりする人もいて面白かったですね。

 聴衆が挑んでくるので私も鍛えられたし、そのために歌もいっぱい作りました。私にとってのエネルギー源です。ちょっと不思議なのですが、私は少々足がもつれていても飲んでいる方が歌詞を間違えない。あとから映像を見るとパシッと歌っている。最近はお客さんが昔のようには飲まなくなったし、私もコントロールしながらなので歌に集中でき、すごい一体感が生まれます。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  1. 6

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  2. 7

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 8

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも