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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

4本の映画で理解する「性加害と隠蔽、その告発」 見て見ぬふりの責任も作品は問いかける

公開日: 更新日:

 それに対して「神父による性加害」を題材にしたのが「スポットライト 世紀のスクープ」(トム・マッカーシー監督、15年)。ボストンのカトリック教会で神父が長年、児童性虐待を行っていたが、教会側は組織的に疑惑を隠蔽。教会側の圧力に屈せず実態を暴いたボストン・グローブ紙による調査報道(02年)はピュリツァー賞を受賞し、実話を基にした本作品はアカデミー作品賞・脚本賞を受賞した。

 これらの作品で称揚されるのは真実を追求するメディアのジャーナリスト魂だ。しかし、メディア側の「正義」も問われている。Netflixドキュメンタリー「ジミー・サビル:人気司会者の別の顔」(22年)は、BBCの音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」の司会者を長年務め、チャールズ皇太子やサッチャー首相(当時)との親交を誇り爵位まで得たDJ出身の大物芸能人ジミー・サビルによる「英国史上空前の性犯罪」を糾弾する。病院での奉仕活動の裏で入院障害児に性的虐待を加え、5歳から75歳まで500人を超える男女に性加害を及ぼしたサビルは「プレデター」(捕食者)と呼ぶ他ない性犯罪者だったが、その疑惑追及を握りつぶしたのは他ならぬBBC自身だった。2011年のサビル死去(84歳)後にようやく疑惑追及が本格化、彼の墓石は撤去された。ジャニーズ性加害を糾弾する今回のBBC番組は贖罪としての色彩も帯びている。

 性加害者による人権侵害だけでなく、隠蔽への加担、見て見ぬふりの「沈黙の不作為」責任も映画は問いかける。この秋、腰を据えて見るべき作品が揃っている。

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