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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画芸術の頂点に立つクリストファー・ノーラン監督はなぜ「オッペンハイマー」を題材にしたのか

公開日: 更新日:

 今年のアカデミー賞は、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞、山崎貴監督「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞を獲得し日本中が歓喜に沸く一方で、作品賞・監督賞など最多7部門を独占したのは英国系監督クリストファー・ノーラン(53)の超ド級大作「オッペンハイマー」だった。

 第2次世界大戦下で核兵器の開発競争が進む中、米政府はマンハッタン計画を策定し、理論物理学者ロバート・オッペンハイマー(主演男優賞のキリアン・マーフィ)をロスアラモス研究所長に任命。史上初の核爆発実験「トリニティ」を経て、核分裂連鎖反応を利用した原爆が生み出される。広島・長崎への投下後、「原爆の父」として称賛を浴びるオッペンハイマーだが、その心中に「凄まじい白色光の中で一人の少女の顔が熱線で焼けただれ、足元の黒炭化した遺体を踏み抜く」白昼夢が去来する。「我は死なり。世界の破壊者なり」という苦悩を抱え、核融合技術を使った水爆開発に躊躇するオッペンハイマーに対して、戦後の冷戦期に立ちはだかったのが原子力エネルギー委員会(AEC)のルイス・ストローズ委員長(助演男優賞のロバート・ダウニー・Jr)。共産主義運動に関与した過去を洗い出し、国家機密に関与する資格(セキュリティークリアランス)を剥奪しようとするのだ。

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