「談志師匠が鰻重を3人前、お土産にお持ち帰りになりました」

公開日: 更新日:

 前座修業6年の後、2003年、志の吉(前座名)は二つ目に昇進する。

「立川流には昇進試験があります。落語50席、歌舞音曲、講談のさわりを読むのが必須科目で、家元(談志)の前で演じて合否が決まるんですが、孫弟子の場合、それぞれの師匠の判断で決めていいことになってました。それで師匠(志の輔)が、僕の昇進を報告したんです。すると家元が、『孫弟子を見せてみろ』と言い出して、快楽亭ブラック門下のブラ房(現・立川吉幸)と志らく門下の3人の5人が、昇進試験を受けることになりました」

 試験会場は談志の行きつけ、上野公園内にあるうなぎ屋、伊豆栄別館の<梅川亭>である。

「舞台が付いてる座敷を借りて、家元のお食事とお土産のサーロインステーキ肉を用意しました。そこで5人が順番に落語と講談、歌舞音曲をやるわけなんですが、あんなに緊張したのは初めてでした。合格しないと、昇進を決めてくれた師匠、志の輔の顔に泥を塗ることになりますから。なんとしても合格しないと、というプレッシャーが凄かった。ブラ房がうたってる最中、家元がトイレに立ったので中断したら、トイレの中から家元が、『うたってろ!』と怒鳴る声が聞こえたこともあって(笑)。いよいよ発表の時、最初に僕を指さして、『おまえはいい』と言われました。家元の指先からレーザー光線が出て、体が裂かれるような感じでした。安堵感で体の力が抜けるような。結局合格は2人、3人が不合格でした。お勘定は合否関係なく5人が割り勘で払うんですが、予算よりずいぶん高いので女将に尋ねたら、『談志師匠がうな重を3人前、お土産にお持ち帰りになりました』と言う(笑)。そこまで手が回ったかと。これが今も立川流に伝わる『鰻の幇間』の実話版です」

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」