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松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

クリストファー・ノーランと野田秀樹 ふたりは鳴き声を異にする〈炭鉱のカナリア〉どうしなのかもしれない

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 ぼくの学生時代は野田率いる劇団夢の遊眠社が頂点を極めていたころ。流行りに飛びついて何本か観た後は縁遠い日々を過ごしてきたので、劇場でNODA・MAPを鑑賞するのは今回が初めて。あ、その間に野田さんのお連れ合いの藤田陽子さんと仕事でご一緒したことはあったけど。

■自分はいま奇跡的なタイミングでこの舞台を観ているのでは?

 ぼくにとっては久しぶりの野田ワールド。遠い昔に衝撃を受けた膨大な台詞量は健在、いやパワーアップしていることに驚く。兄弟の父を演じる竹中直人に至ってはラップしていたからなあ。けっして最先端のカッコいいラップではなかったけれど、こちらもそれを気にする年齢ではなくなっているし。なにより「迂回の愉しさ」というべき饒舌さに身をまかせる時間が心地よく、視聴覚があたえる酩酊気分を大いに味わう。

 ストーリーが展開していくうちに、ん? 長崎? もしかして自分はいま奇跡的なタイミングでこの舞台を観ているのでは? と気づいて鳥肌が立った。

 そう、『正三角関係』は長崎に原爆が投下された日、まさに1945年8月9日に向かっていく。野田秀樹は『カラマーゾフの兄弟』に長崎原爆投下を重ねてみせたのだ(長崎は彼の出生地でもある)。いかにも彼流儀の重ね技とはいえ、さすがになんの予備知識も心構えもなく8月9日に観ると震えたなぁ。先週の本連載で記した通り、一週間前に広島の平和記念資料館を訪ねていたという事情もぼくにはあった。

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