真琴つばささん 20年通った街のお寿司屋さんが閉店…初めて「生きる力」だったと気づいた

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「握る人でこんなに味が違うんだ」と思うほど、おとうさんが握るネタはみな生き生き輝いて見える。マグロ、ミル貝、エビ、とびっこ、キュウリ、たくあん、しそ、ゴマなどが入った特別な手巻きを作ってもらったこともありました。こんなに入っているのに口の中でそれぞれの味がハッキリわかってとてもおいしく、心の中で「宝巻き」と名づけてました。あの手巻きはおとうさんにしかできないですし、それを支えているおかあさんの存在も欠かせないと思いました。

 ご夫婦は三十数年前から同じ場所でお店をやられてきたので、親の代から通われている方もいらっしゃいましたよ。私も気づけば20年の常連。本当にあっという間でした。ある時期に突然、「来月に辞める」とおっしゃられ、みんなびっくりしていました。

■「当たり前」がなくなる寂しさ

 最終日近く、昔から通っていた仲間と集まり、みんなでカウンター越しに花を一輪ずつ渡して、宝塚の退団みたいな雰囲気で(笑)。

 閉められてから数カ月間、私の心におとうさんの味やおかあさんのおもてなしへの思いが日ごとに募っていったんです。お店に行くことが当たり前だったので、「当たり前」がなくなる悲しさを感じました。他のお店でお寿司をいただいても、おとうさんの味が舌に残っています。私にはただの飲食店ではなく、生きるチカラになっていたと実感しました。私だけでなく、「お寿司屋さんロス」の常連が大勢いるようです。

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