著者のコラム一覧
牧村康正ジャーナリスト

1953年、東京都生まれ。立教大学卒業後、竹書房に入社し、漫画誌、実話誌、書籍編集などを担当。立川談志の初の落語映像作品を制作。実話誌編集者として山口組などの裏社会を20年にわたり取材。同社代表取締役社長を経て、現在フリージャーナリストとして活動。著書に「ごじゃの一分 竹中武 最後の任侠ヤクザ」「『仮面』に魅せられた男たち」(ともに講談社)などがある。

渡哲也「闘う家長の忍耐と狂気」(3)裕次郎の病状悪化に「変わり果てた姿を世間に晒すくらいなら、私の手で…」

公開日: 更新日:
約2カ月ぶりに慶応病院屋上に元気な姿を見せた石原裕次郎(右はまき子夫人、左は渡哲也・1951=昭和56=年6月)/(C)共同通信社

 ここで渡哲也が石原プロへ入社した経緯を振り返っておこう。

 石原プロ製作の「黒部の太陽」(熊井啓監督、一九六八年)は観客動員数八〇〇万人、配収七億九〇〇〇万円の記録的ヒットになり、翌六九年の「栄光への5000キロ」(蔵原惟繕監督)も配収六億五〇〇〇万円を稼ぎ出した。しかし七〇年の「富士山頂」(村野鐵太郎監督)は赤字。「ある兵士の賭け」(千野晧司共同監督)も大幅な損失で石原プロは七億円の借金を抱え、続く「エベレスト大滑降」(金宇満司撮影監督)、七一年の「甦える大地」(中村登監督)も失速して借金は十億円にふくらんだ。石原プロが深刻な経営危機にあることは誰の目にも明らかで、親しかった人間も周囲から去って行った。

 一方、七一年に日活がロマンポルノ路線に転じたため行き先を探っていた哲也は、撮影で知り合った小林正彦(通称・コマサ、のちの石原プロ専務)の誘いに応じ、東映などの話を断って、七二年、石原プロ入社を決める。このとき哲也は全財産の一八〇万円を裕次郎に使ってくれと差し出し、裕次郎は涙ぐみながら丁重に辞退した。「渡哲也 俺」(柏木純一)によれば、この金額は当時のサラリーマンの年収四年分に当たるという。 

この記事は有料会員限定です。
日刊ゲンダイDIGITALに有料会員登録すると続きをお読みいただけます。

(残り1,868文字/全文2,379文字)

メルマガ会員
0円/月(税込)
今なら無料で日刊ゲンダイDIGITALの有料会員限定記事と競馬記事をそれぞれ3本試し読みできます!
オススメ!
プレミアム
2200円/月(税込)
日刊ゲンダイDIGITALの有料会員限定記事読み放題。最新の紙面をビューアーで閲覧可。競馬出走表も予想も全部読める。会員限定オンライン講座見放題。会員限定のプレゼントも。
スタンダード
780円/月(税込)
日刊ゲンダイDIGITALの有料会員限定記事が月50本まで読める。
新聞郵送セット割
3550円/月(税込)
プレミアムプランのサービスに加えて新聞も郵送で後日お手元へ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」