「時代に挑んだ男」加納典明(31)命がけで撮ってきた写真を持ち込み、杵島隆先生に弟子入りを許された
一気に名を知らしめた一枚の写真
加納「俺の勝負作だった。18歳から命がけで撮ってきたもののなかから厳選して持っていった。それで許されて入れてもらって、2年ぐらいやった。普段は下働きなんだけど先生が忙しくてときどき時間的に撮れないときがあるのよ。そういうのを撮ると、兄弟子たちより俺が上手いんだ。結果的に先輩を差し置いて俺の写真が採用されるようになった」
増田「それで目をかけてもらった」
加納「そう。それで俺もだんだん『もう1人でできるんじゃないか』『1人でやってみたい』となっていって、フリーになったんだよ」
増田「1964年から1人でやりだして。そのときは彼女は?」
加納「一緒に住みだしたのはその頃だね」
増田「フリーになってもすぐは食べれなかったと思うんですが、ニューヨークへ行くまでの5年間はどんな感じだったんですか」
加納「それこそなんでもやったよ。注文がどんどん来るわけじゃないけど、杵島先生のところにいた時に知り合った印刷関係とかクライアントとか、あるいはメディアとか、いろんな人と関わりの中で俺を認めてくれた人が結構いたんだよ。そういう人たちの関係で仕事を貰ったりしてた。 俺は営業がコツコツできる人間じゃないからね。でも、まあ暮らしに困るようなことはなかった。それなりに仕事はあった」