著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(31)命がけで撮ってきた写真を持ち込み、杵島隆先生に弟子入りを許された

公開日: 更新日:

一気に名を知らしめた一枚の写真

加納「俺の勝負作だった。18歳から命がけで撮ってきたもののなかから厳選して持っていった。それで許されて入れてもらって、2年ぐらいやった。普段は下働きなんだけど先生が忙しくてときどき時間的に撮れないときがあるのよ。そういうのを撮ると、兄弟子たちより俺がうまいんだ。結果的に先輩を差し置いて俺の写真が採用されるようになった」

増田「それで目をかけてもらった」

加納「そう。それで俺もだんだん『もう1人でできるんじゃないか』『1人でやってみたい』となっていって、フリーになったんだよ」

増田「1964年から1人でやりだして。そのときは彼女は?」

加納「一緒に住みだしたのはその頃だね」

増田「フリーになってもすぐは食べれなかったと思うんですが、ニューヨークへ行くまでの5年間はどんな感じだったんですか」

加納「それこそなんでもやったよ。注文がどんどん来るわけじゃないけど、杵島先生のところにいた時に知り合った印刷関係とかクライアントとか、あるいはメディアとか、いろんな人と関わりの中で俺を認めてくれた人が結構いたんだよ。そういう人たちの関係で仕事をもらったりしてた。 俺は営業がコツコツできる人間じゃないからね。でも、まあ暮らしに困るようなことはなかった。それなりに仕事はあった」

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