著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(28)稀代の写真家が画家に…「俺ほどPhotoshopをいじれる同世代はいない」

公開日: 更新日:

 作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇

加納「親父にはジレンマがあったと思う。画家になりたいけど食わせなきゃいけない子供が5人いる。兄貴に私に妹、妹、弟です」

増田「それは重い」

加納「そういう中で、その日暮らしですよ。国民全体が貧しい時代ですしね。俺の家もずいぶん貧乏した。その代わり、他の家と違って、そんなものにお金使うのかというものに使ったりして、そういう意味では、親父はちょっと変わった目で見られてた」

増田「名古屋にいて、文化的なものに触れられる環境があった。当時の地方じゃ、そういう家庭ってなかなかないですよね」

加納「そうですね、思想的な部分も含めて親父は筋金が入ってたと思う。ヘーゲルとか、哲学書を随分読み込んでました。そういう意味では、俺は親に恵まれました。親によって道は作られたと言ってもいいぐらい、その取っかかりはあった」

増田「大変な影響を生涯を通じて受けたわけですね」

加納「そうですね。親父の現実を見ながら、俺の中で今でも消えないものはいっぱいありますから。私も83歳になりましたから、いわゆる日常的な仕事ってのは少なくなってきて、と同時に、もう10年以上になるんですけども、絵の方ですね、アクリルですけども、それの個展を10回くらいやってる。親父が果たせなかった1つの夢を追っかけてみようっていうのがあって、俺を突き動かす1つのパワーになってる」

増田「個展を開くということは、販売もしてるのですか?」

加納「もちろんです。俺には写真家というベースがあって何十年とやってきてるわけですから、写真材料がネガとして大量にある。それをAdobe Photoshopで起こして絵にしていく。同年代で俺ぐらいPhotoshop*をいじれる人いないと思いますね。いわゆるデッサンづくりですけど、絵画の」

※Photoshop(フォトショップ):米国Adobe社が開発販売しているフォトレタッチソフト。デザイナーなどプロクリエーターのシェアは圧倒的である。同社のIllustratorやInDesignとの連携能力が強く、印刷出版界でもデファクトスタンダード。

増田「デジタルを駆使してるんですね。どうやってそれを絵画に?」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発