『有吉の壁』ブーム期待も…人気キャラの“展開”に冷めた視線。番組の過剰な介入で萎えるファンの複雑心理

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コクハク

 日本テレビ・水曜7時からの人気番組『有吉の壁』(日本テレビ系)。なんとこの10月でレギュラー放送開始から5年半を越えることになるそうです。

 単発番組だった時期を含めると、まさに10年を超える長寿番組に。その歴史の中で「TT兄弟」(チョコレートプラネット)や「KOUGU維新」(きつね ほか)など、番組の枠を超えてヒットしたギャグやキャラクターが多数生まれました。

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 それに続けとばかり、今年初めに彗星の如く現れたのが「京佳お嬢様と奥田執事」です。キャラ誕生当初、この勢いは2025年を代表するヒットコンテンツになると期待されました。しかし…現在の反応はというと、一部の人気にとどまっているような気がしてなりません。

きょんちぃと奥田の化学反応に大反響だったが…

 このコンビが誕生したのは、1月8日放送『有吉の壁』の「即興男女ユニットの壁を越えろ!おもしろ千客万来の人選手権」の中でのこと。ぱーてぃーちゃん・金子きょんちぃさんとガクテンソク・奥田修二さんのコンビがくじ引きで決まり、そこで披露した一連のネタがきっかけです。

 きょんちい演じる奔放なギャルお嬢様と気弱で真面目そうな奥田さんの執事という、バッチリハマったキャラクター、4コマ漫画にまとめられそうなわかりやすさ、そして女オタクが好みそうな萌え要素がふんだんにちりばめられたそのネタは、視聴者の心を一瞬でガッチリつかみました。

 放送直後からSNSのトレンドにも登場するだけでなく、ファンアートや二次創作ストーリーがネット上の至る所にあふれるほどに。そして、音速の速さでキャラの公式アカウントができ、1カ月もしないうちにオリジナルのショート動画が発表されるに至りました。その勢いでマンガが連載、出版されました。

 ただここ最近、早くも飽きられた空気を感じるのは気のせいでしょうか。ファンアートを発表している根強いファンもいますが、反応は薄く…。8月29日には小説も発売されましたが、一時期の勢いは何だったのかと思うほど、早くもブームが沈静化してしまったような気がします。

なぜブームは一瞬で終わった?

 筆者も、1月の放送でふたりのキャラを見た時、稲妻が走ったような衝撃を受け、その後SNSに投下されるファンアートを、タグを漁って見にいっていたひとりです。

 しかし、その後すぐに「京佳お嬢様と奥田執事」の公式アカウントが作成され、YouTubeでショート動画が作られ始めてからでしょうか、早くも「なんか違う」と感じ始めました。ショート動画も連載が始まった漫画も、求めていた通りのストーリーや世界観を提供してくれてはいるのですが…。



 多様な展開を公式が提供してくれるのは嬉しいことでしたが、様々な解釈や見解で盛り上がっていた波の中に即公式が参入し、完成された“正解”を提示されてしまった――つまり、想像の余白を失い、単に受け取ることしかできなくなってしまったのは言うまでもありません。

 また、すぐに公式が介入したことで、トレンドやSNSで盛り上がっていることを商売に利用された気になり、これ以上盛り上げる気力まで奪われてしまいました。

 ここ数年テレビ番組が、放映による広告収入以外の二次的な収入を得るために、イベントを開催したり、グッズ展開やアイドルプロデュースなどをすることに重点を置いています。

『ラヴィット』(TBS系)のグッズや、『ゴッドタン』(テレビ東京系)のマジ歌イベントなどもその類でしょう。『有吉の壁』も他にもれず、「ブレイクアーティストLIVE」や映画製作など、様々な仕掛けを行っています。



「京佳お嬢様と奥田執事」は自然発生でしたが、あまりの盛り上がりぶりに、制作側がいてもたってもいられなかったのでしょうか。動きがあまりにも素早すぎて、今後さらにファンの熱があがり、より多くの人の心を掴む機会を奪ってしまったような気がします。

番組関係内に留めた「TT兄弟」「KOUGU維新」

『有吉の壁』のいいところは、ヒットしたキャラを番組内で安く使い倒さないところでした。

「TT兄弟」も「KOUGU維新」も、あるいは「Mrパーカージュニア」「ストレッチャーズ」なども、番組内でさらに猛プッシュできる余裕はあったはずですが、キリのいいところで見切りをつけ、その後は番組内イベントで披露するのみという潔さがありました。

 その後、キャラ自体が自立をし、番組を超えてCMに採用されたり、他バラエティで披露されるなど、さらに広がりを見せることもありました。



 有吉さんも、世間でどんなに番組発のキャラやネタが盛り上がっていようが、ネタのマンネリを感じればそれを口に出し、早期の終了を促しています。

 お笑い的な腐しもあるでしょうが、もう一つの理由として、電波少年芸人として、そしておしゃべりクソ野郎から派生するあだ名キャラとして自身が消費されていった経験からくる、「芸人が一過性のキャラ頼みにならないための愛情」なのかもしれません。

 また、番組がひとつのキャラに頼ることによって、それ目当てのお客さん頼みになってしまうのを懸念しているのでしょう。

座長・有吉の優しさ

 有吉の壁がいまもなお勢いを失わずに人気番組であり続けているのは、そんな有吉さんのお笑いへの客観的な姿勢と愛情がなせる業なのかもしれません。



『京佳お嬢様と奥田執事』も、番組MCの有吉さんがとっていた俯瞰のスタンスを制作側も徹底しておけば、もう少し視聴者的な楽しみが長持ちしたような気がしてなりません。

 もし、公式が首を突っ込むにしても、商機を失う可能性は覚悟のうえで、落ち着いたタイミングを待って欲しかったです。

(小政りょう/ライター)

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