(2)「最新医療」=「最先端の画期的治療」とは限らない
ある日、患者さんからこんな相談を受けた。
「“膵がん”と言われました。手術を勧められましたが、やはりやるべきでしょうか? 出来ればやりたくないんですが……」
落ち込む患者さんとあれこれ話し合った結果、私はその場で国立がん研究センターに紹介状を書いた。
言い訳がましいが、開業医の立場では最新の医学水準を常に完璧に理解しているはずもなく、出来るだけ患者さんの納得を得られるような方法を取ることにしている。
古い話になるが、私は東京の某がん専門病院に勤務していたことがある。ベッド数は1000床を超える有名病院だ。大学の教授から進行性膵がんに関する最新治療を勉強してこいとの命令だった。
この施設での方針は、患者さんの膵臓及び周辺臓器を広範囲に切除し、そのまま専用のエレベーターで手術室から放射線治療室に運び、開腹したままの腹腔内に金属筒を設置して放射線を照射、その後、数カ月にわたって多種にわたる抗がん剤の投与をするという治療であった。