「文化財に泊まる。」偏愛はな子著
「文化財に泊まる。」偏愛はな子著
国や地方自治体が指定する文化的価値のある歴史的建造物を利用したり、重要伝統的建造物群保存地区の区域内にある宿泊施設を紹介するビジュアルガイド。
長野県・湯田中温泉の旅館「よろづや」の「桃山風呂」は、国の登録有形文化財。戦後、「湯田中温泉に名物風呂を」との願いから、約3年をかけて建てられた純木造伽藍建築様式の荘厳な湯どころだ。
社寺建築の技法で造られた格天井や彫物欄間など、ぜいを尽くした脱衣所や浴場は、まさに寺院さながらの空間だ。湯上がりには、本館のロビーラウンジでの休憩がおすすめ。壁面には豊臣秀吉が狩野永徳に描かせた「唐獅子図屏風」(模写)が圧巻の存在感で出迎えてくれる。毛利家が手放したものを収蔵した貴重なコレクションだそうだ。
一方、福島県会津の奥座敷・東山温泉の旅館「向瀧」は、会津藩の湯治場だった建物を明治6年に引き継ぎ開業。
当時の職人技術が結集した建物は、国の登録有形文化財に指定された第1号物件だという。昨年には、庭園も国の登録記念物に指定され、四季折々に訪ねたい宿だ。
ほかにも、客室棟をはじめ、浴場や橋など全部で15件もの文化財を有する創業150余年の伊豆・修善寺の「新井旅館」や、建築家フランク・ロイド・ライトの愛弟子である遠藤新によって設計され「小さな帝国ホテル」と称される1日1組貸し切りのホテル「葉山加地邸」(神奈川県)、関東大震災や東京大空襲を乗り越えた東京・本郷の和風旅館「鳳明館」など。20の施設を紹介。
各施設では、もちろんその格式や豪華さにふさわしいおいしい料理を提供。
各地でホテル代が軒並み上昇する中、割安感さえあるこんな宿で過ごせば、きっと忘れられない休日となるはず。
(エクスナレッジ 1980円)