「私と街たち(ほぼ自伝)」吉本ばなな著
「私と街たち(ほぼ自伝)」吉本ばなな著
人気作家によるエッセー集。
RCサクセションの「甲州街道はもう秋なのさ」という歌が大好きで、大人になって初めて甲州街道を通ったときはうれしかった。子どものときにそうと知らずに何度も訪れていた道が歌の中の道だと知ったからだ。そして今、著者にとって甲州街道を歩くのは特別切ないことだという。なぜなら甲州街道は著者にとって「死を受け入れていく道」になったからと、父との墓参りの思い出、そしてその父や大切な友人、愛犬の死について語る。
以降、昔のボーイフレンドが通っていた東上野のカウンターだけの安居酒屋、思春期を通して夢の象徴のような存在だった初恋の人と出会った千駄木など。さまざまな街に染み込んだ記憶を掘り起こしながら、自らの人生を振り返る。
(河出書房新社 770円)